MY WISH







私の隣にあなたがいること。
それがただ嬉しい。





MY WISH





今年ももうすぐ終わろうとしている。
時計の針が刻一刻と時を刻み、次の年へのカウントダウンが始まった。
私と周助はリビングのソファに腰掛けて賑やかなテレビ番組を見ていた。


二人だけの部屋。
私はふと今年あった出来事を思い返してみる。
いろんな事件があった。
嬉しいニュースもあったし、悲しいニュースもあった。
でも何より大きなニュースといえば私と周助が結婚したことだろう。

名字がみょうじから不二になって“不二なまえ”になったこと。
結婚式の時にお父さんが感きわまって泣いてしまったこと。
二人だけの生活が始まったこと。
何度も甘く優しい夜を過ごしたこと。
朝目覚めると隣に周助がいてなんだか嬉しい気持ちになったこと。

私にとってどれも愛しい思い出ばかりだ。
そしてもうすぐ初めて二人で新しい年を迎えようとしている。


「今年ももうすぐ終わりだねー」

「そうだね」

「周助にとって今年はどんな年だった?」

「僕?」


そうだなぁ…と少し考えこんだ後、周助は私を見つめて笑顔で答えた。


「“驚”の年だったな」

「驚き?」

「そう、なまえと結婚したことや僕らだけの生活が始まったこと、なまえの料理が美味しいこととか…僕にとっては驚きでいっぱいの年だったな」

「私も」


そう言うと周助は何か思い出したように私を見つめ、悪戯っ子のようににこっと微笑んで付け足した。


「そうそう、なまえの寝相が意外に悪いことも“驚”の一つだけどね」

「周助!」

「クスッ 冗談」


クスクスと笑い合う。
こんなやり取りも周助とだからできるんだなって思う。
本当の自分をさらけ出せる人。
どんな自分も受け入れてくれる人。
一緒にいて落ち着く人。
それが周助だ。


「なまえ」


会話が途切れた後、周助の甘ったるい声が耳元でした。


「? なぁに、周助」

「僕、なまえと結婚することができて本当によかったなって思ってる」

「周助…」

「ずっとこうなることを夢見てた…なまえが 朝目覚めてから夜寝る時まで一緒にいてくれること。僕の傍になまえがいてくれること。それがただ嬉しいんだ」


周助が真剣な眼差しでそう言うから、思わずドキッとしてしまった。
いつもにこにこ顔なのに、時々私に見せるその真剣な眼差しは付き合い始めた頃からちっとも変わらない。
周助のこの瞳が私は大好きだ。
今映っているのはきっと私だけ――。


「なまえは僕と結婚できてよかった?」


今度は周助が私に尋ねてきた。
私は「当たり前でしょ」と言う代わりに周助の唇にそっとキスをした。
突然の私の行動に周助は目を丸くした。
けれどそこは周助。
慣れた手つきで私の後頭部に手を回し、唇が離れないように押さえ付けた。


「……んッ……」


酸素を求めて僅かに口を開けると周助の舌が入ってきて、触れるだけのキスから濃厚なキスへと変わる。

互いの呼吸を合わせるように。
求め合うように。
周助が私の唇を貪る。

熱くなる唇。
速くなる鼓動。

急に身体の体温が上昇してきたみたいに私はのぼせ上がってしまった。

「…ん…ッ…ハァ……」


ようやく唇が離された。
私はゆでだこ状態になったというのに、周助はまだ余裕って感じの顔をしていた。
…なんかちょっとむかつく。


「周助…なんだかキス慣れてるみたいだけど…私と付き合う前に誰かとキスした?」


私の質問に周助は一瞬?マークを浮かべたみたいだけど、すぐに意味がわかったようで突然クスクスと笑い出した。


「な…何よ!何かおかしい!?」

「なまえ…僕のファーストキスは他の誰でもないなまえなんだけど」

「嘘!絶対違う!だって初めてキスした時周助のキスすごく――」


そこまで言って自分がこれから何を言おうとしているのかやっとわかった。
周助は笑顔を濃くして聞いてきた。


「“周助のキスすごく――”何?」

「……やらしかった」

「上手かったの間違いじゃない?」

「違うの!すごくやらしくてなんか、その…」

「気持ちよかった?」

「わかってるなら言わせないでよ!!」

「いや…なまえの口から聞きたいな、と思って」


周助が嬉しそうに笑う。


「もー!気持ちよかったッ!!だから私の前に誰か他の人とたくさんキスしてたのかなって思っちゃったの!」


そう言ってプイと横を向いた。


「なまえ?」

「………」

「僕はなまえとしかキスしたことがないよ?この先たとえどんな人が現れようとも…キスしたいと思うのはなまえだけだ」


周助が私の頭を優しく撫でる。
こんな周助の行動一つで許してしまう。
こんな私はきっとおかしいかな…。


「…ホント?」

「本当」

「ホントにホント?」

「嘘偽りなく本当だよ」


そうして二人抱き合った。





こんなやり取りをしていたから気がつかなかったけれど、もうすぐ12時。
日付が変わろうとしていた。


「周助」

「ん?」


周助の笑顔が私の隣にあること。
周助の隣にいれることが私もすごく嬉しい。


「今年はこんな私をもらってくれてありがとう。来年…もうすぐ今年になるけど、これからもずっとよろしくね」


そうして見つめ合った先には私の大好きな周助のとびきりの笑顔が。

この笑顔をいつまでも見つめていたい。





やがて変わった日付と共に再び優しいキスが墜ちてきたのは――また別の話。



二人の未来を指示すように、私と周助の左手の薬指の指輪がキラリと光った。









‥fin‥