ボクノコイ。





いつからだろう。
君の視線が僕以外の人に向けられるようになったのは。







「周助…」


君の声が震えてる。
大きな瞳に涙をいっぱい溜めて。
切なそうに僕の名前を呼ぶ。

今まで幾度と告白してきた女の子を振ってきたけど、今度は僕が振られる番なんだね。
大好きだった彼女に。


本当は誰のものにもなってほしくなかった。
ずっと僕だけ見つめていてほしかった。
僕だけのなまえでいてほしかった。

そんなエゴが君を苦しめ、悲しませていたなんて。
僕は気付きもしなかったのかな…


「なまえ…」

「周助…ごめんなさい…」

「いいよ。………なまえは好きなんでしょ?…彼のことが。」

「うん…」


泣きながら頷くなまえ。

こんな時まで、可愛いだなんて。
思ってしまう自分が憎らしい。
それほどまで僕はなまえが大好きだったんだけど。
君の気持ちはもう僕に向いてない。


「ねぇ なまえ…?」


僕は静かに彼女の名前を呼んだ。


「僕と一緒にいて楽しかった…?」



僕と付き合って。
他愛のない会話をして。
君は僕といて楽しかったのかな。

僕のこと、ちゃんと好きだったのかな…



「周助のこと、好きだったよ」

「………」

「でも、今は周助以上に彼のことが好きなの」


ごめんなさい…と。
透明の、綺麗な涙をツゥと頬に流しながらなまえは言った。
胸の内を明かしてくれた。
初めてなまえの本音が聞けた、そんな気がした。



「周助は…これでいいの?」


僕に尋ねるなまえ。
僕はそっと微笑み、なまえを見つめる。
いつも作り慣れているはずの笑顔も、今はどこかぎこちない。
僕は今、ちゃんと笑えてるだろうか。





「僕は…なまえが好きだよ…。でもね、好きだからなまえには幸せになってほしいんだ」





最後に僕は君の幸せを願うために小さな嘘をつく。

君のことが好きだったのは本当。
大好きだから幸せになってほしいのも本当。

だけど、だけどねなまえ。
本当は僕の隣で幸せになってほしかったんだよ…
君の笑顔をいつまでも傍で感じていたかった。



「ありがとう…」



なまえはそう言った。
そして背を向けて走り去った。


その手を掴んで「行くな」って言ったら、君はどんな顔するかな。
でも、もう遅いよね。








「これでいいんだ…」




僕は一人、小さく呟いて君の背中を見つめた。
頬に、静かに涙が一筋伝う。


抑えていた感情が、少しだけ溢れてしまった。









さよならなまえ。
さよなら、僕の恋。












‥fin‥