だいすき






世界中の誰よりきっと。





だいすき





あなたはいつだってやさしくってあったかくて。
一緒にいるとすごく落ち着くの。
まるで午後の日溜まりみたいにあったかいあなたの体温と笑顔は、確実にわたしの脳みそを溶かしてく。
心地よくて、もうねむっちゃいそう。





「なまえ?」





だいすきな優しい響き。
テノールの声がわたしを呼び起こす。
まだ重たいまぶたをゆっくりと開け、そばにある体温を確認する。
あーそっか、今わたし周助のお家でデートしてたんだっけ。


「眠くなっちゃった?」

「うん…だって周助のベッド、寝心地いいんだもん」


それに周助の匂いがいっぱいする。
なんだか周助にふんわりと包まれてるみたい。
あったかくて、トクントクンゆっくりな速度で心臓が脈打つ。
これはわたしが安心してる証拠だ。


うとうと。
わたしは再び微睡みはじめた。
すると周助はクスリと困ったように微笑み、わたしのとなりに入ってぎゅうっと体を抱きしめた。



「置いてかないでよ」



周助が甘えたように言ってきた。
わたしの額に柔らかい唇が落とされる。


「周助…?」

「僕を置いて夢の世界に行かないで…」


掠れた声がやけにセクシーで耳がぼっと熱くなる。
こんな甘えん坊な周助は滅多にみれない。
いつもは余裕綽々で周助がわたしの一歩先を行ってる感じがするけれど。
今日はちょっとだけ違うみたい。
わたしは嬉しくなって周助の胸に顔を押しあてた。
あ、周助の匂いがさっきよりもっとする。


「周助の心臓、トクントクンていってる。わたしとおんなじ」

「そ。なまえとおんなじ。ゆっくりと拍動してるのわかる?」

「うん。優しいリズム…周助もわたしといると落ち着く?」

「もちろん」


とびきりの笑顔で、目を細める周助。
ああ…わたし、この笑顔見るために生まれてきたのかもしれない。


「だいすき…周助だいすきだよ…」


自然に溢れた言葉。
周助の背中に腕を回しわたしもぎゅうっと抱きつく。
あったかいあったかい周助。
額にまぶたに、鼻に頬に、最後に唇に降ってきた周助の唇。
音もなく、静かに重ねた。
触れているだけなのに、確実に熱を持つ。
焼けるように熱いよ。


「あ…なまえの心臓の音、さっきより早くなった」

「うん。すごくドキドキしてる」

「僕のせい?」

「うん。周助のせい」


クスッと笑い合ってわたしは再び目を閉じる。
周助の体温に包まれながら。
優しい午後の一時に身をまかせて眠りについた。

遠くで周助の声がする。
わたしの名前を何度も呼ぶ声。




「なまえ…僕もだいすきだよ」




そう聞こえたのは夢でも幻でもないよね?

きっとふたりなら。
同じ夢の世界でまた会える。
どんなときもあなたのそばにいたいから。
願わくは、周助もわたしと同じ気持ちでありますように。









(真昼に見る夢も、悪くはないよね?)







‥fin‥