eternally






今ここに誓うよ。





eternally









君と出会ったのは、桜の花の舞う季節だった。


「…不二くん?」


僕は今でも覚えてるよ。
あの時の君を。
戸惑いながらそっと僕の名前を呟き、でも向日葵のような笑顔で僕に近付いてきた君を。
僕はあの瞬間から、もうずっと君に心を奪われてきたんだね。


最初はそれを認めたくなくて。
君も今まで僕の前に現れてきた女の子と一緒だろうって決め付けて。
関わろうとしなかったり。
わざと無視したり。
君を傷つけたりもしたよね。


「私…そんなんじゃない!」


君が初めて泣いた日。
涙を瞳にいっぱい溜めて僕に想いを伝えた、あの日。
君はまだ覚えてるかな。


「不二くんのこと、そんな風に見てない!友達じゃない…クラスメートじゃない…!私は不二くんのこと、一人の男として好きなの…っ」


いつもは明るい君なのに、触れたら壊れてしまいそうな程儚げに涙を流す君。
手を伸ばそうとしたら拒絶されて。
君は目を抑えて必死に涙を拭っていたね。


「…泣いてない。泣いてないから…っ」


どうしてこんなに僕の心を乱すんだろう。
これ以上好きになんてなりたくなかったのに。
君は僕の心の深い所に入ってきて離れない。
認めたくなかっただけなんだ。
君のこと、こんなに好きな自分を。
初めてだったから。
こんなに人を好きになったのは。
だから僕はわからなくて、でも君だけにはわかってほしくて。
夢中で君を抱き締めた。




君と初めて手を繋いだ日。
キスをした日。
喧嘩した日。
仲直りした日。
君の甘い体温に触れた日。

言い尽くしたら切りがないけど。
どれも覚えてるよ。
これから先も。
きっと忘れはしないだろう。


何度も繰り返した季節は二人を変えてきたね。
少しずつ、大人になっていった僕ら。
だけど、君への想いはあれからずっと変わらなくて。
むしろどんどん強くなっていった。



















「……周助」



名前を呼ばれて僕はゆっくりと振り向いた。
純白のウェディングドレスを身に纏った君。
出会った時と同じ、向日葵のような暖かい笑顔で。
ふわふわと柔らかく微笑んでいる。


「周助 どうしたの?」


小首を傾げて僕に尋ねる。
僕は目を細めて君を見る。

今までいろんな君を見てきた。
笑った君、泣き顔の君。
怒った君、悲しげな君。
嬉しそうな君、照れた君。
どんな君も好きだけど、今日は今までのどんな君より美しくて。
こんな綺麗な花嫁さんが僕の所へ来てくれるなんて、凄く嬉しいんだ。


「綺麗…」

「フフッ 改めて言われるとなんだか恥ずかしいな」

「綺麗だよ…。誰にも見せたくないくらい…」

「誰にも、は困るなぁ。だってこれからみんなの前に出るし」

「冗談だよ。でも…本当に綺麗」


僕がそう言うと、君は微笑んで呟いた。


「周助も…」

「ん?」

「周助も、すっごくかっこいいよ」


顔を赤らめて言う君。
上目遣いでそんな風に言われたら…。
僕、抑えられないんだけどな。
心の中で思わず苦笑い。


「さっき」

「?」

「何考えてたの?」


君の可愛らしい質問に僕は再び目を細める。
「君と出会った時のこと、思い出してた」

「えっ…」

「最初僕に近付いてきたのは君だったよね」

「…うん」

「でも好きになったのは僕が先だった」

「周助…」

「きっと、出会った時から僕は君に恋してたんだ」

「それは私の方だよ!周助、全然私の気持ちに気付いてくれなかったし!」

「気付かない振りしてたの。だってこんなに人を好きになったのは、君が初めてだったから。戸惑うことも多くてね」

「…なんか、そう言われると照れるなぁ」


林檎のようにポッと顔を赤らめる君。
だからその顔、反則。

僕は君の顎をくいっと持ち上げ、素早く唇を奪う。


チュッ


触れるだけのキス。
桜色の唇に僕のそれを重ねた。

今まで数え切れない程キスをしたけど。
今日のキスは何度しても忘れられないものになるから。
たくさんしたいと思うんだ。


「もー!周助っ メイク崩れちゃうでしょ?」

「だってなまえが可愛い顔するから」

「言い訳になりません!」


口では怒ってる君だけど、顔は笑ってる。
そして目線が合ったらまた僕らはキスをするんだ。
甘い時が流れる。
でも、これからもっと甘い時が流れるんだよね。
みんなになまえは僕のものになるって見せつけて。
神様の前で永遠の愛を誓うんだ。







「幸せ?」


今度は僕が尋ねる番。
するとなまえはにこっと、花のように微笑み言った。


「幸せだよ」

「よかった…」

「でもね…」

「?」

「これからもっともっと、幸せになる」

「なまえ…」

「してくれるでしょう?」


そう言って微笑んだ君に。
頷く代わりにキスをして返す。
極上の微笑みを添えて。



これからはずっと一緒。
悲しみがあれば 共に泣いて。
喜びがあるなら 共に笑うよ。
そうして毎日を過ごしていきたい。


暖かい愛に包まれて、
夢のすべてはいつまでも続く。



今日は今までのどんな時より素晴らしい。
だから、この日を僕はずっと忘れない。



ううん、この日だけじゃない。
君と歩んできたすべての日を、大切にしまっておくよ。







「なまえ」







君の名前を呼ぶ。
この先僕が何を言うかなんて、君はわかってるよね?










たった一人の君を。
僕はこれから愛し抜くだろう。


だから君も。
永遠に、共に愛し抜くと誓って下さい。


愛してる…
これからもずっと。
君のことを愛してる。













‥fin‥