Sunday Morning
次に目が覚めた時は、あなたからのキスで目覚めさせて?
Sunday Morning
頼みもしないのに、朝はやってくる。 だけど日曜日の朝は好きだ。 いつもと違い、ゆっくりと過ごすことができるから。 少し遅めにセットした目覚し時計も、今の私には届かない。 というか周助が鳴る前に止めちゃうんだよね。 だから日曜日の私はお寝坊さんなんだ。
周助の体温に包まれて。 鼓動を感じて。 朝一番に周助の笑顔が飛び込んでくる。 そんな朝が私は大好きだ。
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さてさて今日は日曜日。 今日もお寝坊かな?って思ったんだけど、なんだか目覚しが鳴る前に起きてしまったんだよね。
カーテンの隙間からうっすらと入ってくる陽の光。 目を擦りながら私は欠伸を一つする。 隣で眠る周助はまだ夢の中にいるようで、規則正しい寝息が微かに聞こえる。
まだ7時前だもんね。 たまには周助にも遅くまで眠っててほしいから、私は枕元にあった目覚し時計のアラームをオフにする。
うん、完璧。
私は周助と向き合うような形でジッと周助の顔を眺める。 伏せられた瞳。 息遣い。 整った顔立ち。 …なんか今の周助って、すごく無防備だ。
(綺麗だなぁ…)
長年一緒にいるけど、こんな周助あんまり見たことない。 周助って他人に弱点を見せないタイプだし。 彼女…というか妻の私にもまだ全てを見せてくれていないような気がする。 きっと無意識のうちに隠しちゃってるんだろうなー。
なんて一人でそんなことを考えていたら、突然周助の腕が私の体に回されて抱き締められてるような形になってしまった。
…ね、寝てるんだよね?
密着した私たち。 更に近くなる距離。 胸の鼓動、ドキドキが止まらない。 こうして抱き締め合ってると二人の境界線がわからなくなる。
(なんか私…周助の抱き枕みたい…)
抱き締められてるからむやみに動くことできないし。 何より周助を起こしちゃうのが嫌だ。
いつも仕事で疲れている周助に今日はゆっくりと眠っててもらいたい。
だけど…顔近過ぎッ!! ちょっと動けば唇が触れる程の至近距離。 私の眠気なんか吹っ飛んでしまいそうだ。 周助の、私を抱き締める力も強くなってるし。 まさか…本当に起きてるんじゃない?
でも雰囲気は寝てるんだよね。
「……周助………?」
「………」
「おはよー」
小声で挨拶。 でもやっぱり反応はない。 なんだ寝てるじゃん。
私はホッと安心してクスッと微笑む。
「…寝てるなら、いいよね?」
私はそっと自分の唇を周助の唇に近付ける。 柔らかい感触。 普段は周助の不意打ちのキスが多いから、この感触を感じてる余裕がない。 今改めて自分からキスをして、この柔らかさを堪能することができた。
うん、悪くないな。 つかむしろ気持ちいいくらいだ。
私はその感触が癖になり、周助が寝ているのをいいことに何度も何度もキスをする。 その度に柔らかい周助の唇に酔い痴れた。
そしてキスの回数も二桁に突入するくらいになった時。 クルッと反転して押し倒された状態になった。 あまりに突然の出来事なので、私はただ目を丸くするばかり。 目の前の周助は目をパッチリと開けていてにこにこと微笑んでいる。 いつもよりご機嫌な様子だ。
「しゅ、すけ?」
「なまえ、おはよ」
語尾にハートマークが付くくらいの極上の笑みで言う周助。 私の前髪を優しく触り、頬も親指で撫でる。
「しゅ、すけ……起きてたの?」
「ん?あぁ…だってなまえが何回も僕にキスするんだもん。そりゃ起きるでしょ」
「……は、恥ずかしい」
「何を今更。…でもなまえ、僕の寝込みを襲うなんていけない子だね」
「お、襲ってないし!」
そう言ったけど、周助は猶もクスクスと笑っている。
「ねぇなまえ。僕の唇、好き?」
「……好き。」
「僕的にはもっとディープな感じのキスの方が好みなんだけど」
「え、」
「続き、試してみない?」
そう言うと周助は私の答えを聞くこともなく、唇を塞ぐ。 周助の舌が歯列を割って入ってくる。 舌と舌が絡み合う、激しいキス。 互いの唾液が混ざり、どちらのものかわからなくなる。
熱過ぎて。 激し過ぎて。 脳髄を直に刺激させるような、本能のままのキスだから。 何も考えられなくなるんだ。 周助でいっぱいになるんだ。
「…んッ……ハァ……」
唇が離された後も、私の熱は治まることを知らない。 それどころか逆に熱を持ち始めている。
周助はというと、いかにも余裕そうな微笑みで私を見下ろしていた。
「本当はこの続きもしたいトコだけど…。朝だしやめておくよ」
周助は再び横たわり、私の体を抱き締める。
「まだ朝も早いし、もうちょっと寝ていよう?」
「うん」
目が覚めたら、また“おはよう”って言ってくれるかな? 今度は周助が私を甘いキスで起こしてね?
結局、周助とお昼頃まで寝ることになった今日。 こんな休日があったってたまにはいいよね?
いつもと変わらない朝だけど。 周助が隣にいるだけで幸せが溢れ出る。
ねぇ周助も私と同じこと感じてるかな?
周助に訊いてみないとわからないかもしれない。
でも私、わかるんだ。
周助も同じ幸せを感じてくれてるって。
そんな、何気ない日曜日の朝。 素晴らしい一日が今日も始まる。
‥fin‥
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