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2人がぶらぶら歩いていると、街の一角が騒がしくなった。

朱雨が反射的に振り返り、一拍遅れて夕雨も反応する。


「・・・喧嘩?」

「・・・みたい」


――この世界で危険なのって、念能力者だけじゃないんだ・・・。

2人の心中の台詞が一致した。


ナイフを投げ合っている喧嘩なんて、危険すぎる。

一瞬、芸かなにかかとも思ったが、やり合っている男2人は本気だ。

というより、周りで囃し立てている人は何を考えているのか、それが2人にはさっぱりわからなかった。


溜め息をついて、夕雨を振り返った朱雨は、妹の顔が強張っているのがわかった。


「夕雨!?どうしたの!?」

「な、なんでもない!大丈夫!」

「大丈夫には見えないって!」


話そうとしない夕雨の目線を辿ると、目線の先はナイフの刃。


「あ・・・!!」

朱雨はそこでようやく思い出した。

――夕雨、先端恐怖症なんだった・・・!!

とっさに、喧嘩している2人の間に割り込む。

自分に何ができるかなんて考えずに、ただ身体が反応した。



「なんだァ、嬢ちゃん」

「悪いがそこにいられちゃ邪魔だぜ?」


めんどくさそうに朱雨を眺める2人に、朱雨はとっさに。


「こんな街中で騒ぐだなんて、迷惑ですよ?」


そう、言い放った。

辺りがシンと静まり返る。


朱雨の言葉が勘に障ったらしく、男の1人が。


「うるせぇ、邪魔すんな!!」

あろうことか、朱雨にナイフを投げつけて来た。

突然のことに朱雨は驚きつつも、冷静を保っていた。

――大丈夫、そんなに速くない。

飛んでくるナイフのスピードを見てそう思った朱雨は、多少の怪我は覚悟の上でナイフを叩き落とそうと、左手を構えた。

利き手である右手を傷付けられるのはいただけない。


彼女の構えた左手にナイフが吸い込まれるように見えて・・・


ぶつかる、そう思った瞬間、ナイフが空中で動きを止めた。

そのまま音を立てて地面に転がる。


「・・・え?」

男が唖然としているのを横目に、内心目を見開きながら朱雨はゆっくりとナイフを拾った。

それを、男に向ける。


「今すぐ立ち去った方が、身のためですよ?」


男は睨みつけてはきたが、悔しそうに立ち去った。

男と争っていたもう1人も、逃げるように姿を消す。


何故か、周りの野次馬から拍手が湧いた。





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