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「最強設定、本当だったんだね!」
「一瞬何があったかわかんなかったよ」
喧嘩に割り込んだことで夕雨は朱雨を怒ったが、今はその怒りも収まったらしく、朱雨の能力について話していた。
その場に留まるのも気まずかったので、歩きながら、だが。
ところで、街を歩いていて気が付いたことがある。
前は理解できなかったはずのハンター文字が理解できるのだ。
理解できる、というより、ハンター文字の上に日本語が浮かんで見える。
それも御丁寧に漢字変換済み。
ありがたいといえばありがたい。
「あ、お姉ちゃん、ホテルだって」
「泊まる?」
「うん。あの本にも目、通しておきたいし」
ホテルだってわかったのも、ハンター文字が理解できたからである。
やはりありがたい。
さっさとチェックインして、部屋に入る。
お金は先程の鞄に入っていた。
恐らくしばらくの間は生活に困ることはないだろう。
これもまた、2人にとってはありがたかった。
「さてと、とりあえずコレ、読んじゃおっか」
表紙に『九重 夕雨の能力について』と書かれた本を引っつかみ、夕雨は2つあるベッドの片方に寝転がった。
それに倣い、朱雨も自分の本を手に、もう片方のベッドに腰掛ける。
しばらくの間、部屋には2人がたまにページをめくる微かな音だけがしていた。