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----朱雨side
目を開いたら、目の前に愛しの妹がいました。
「・・・って夕雨!?」
「あったり前でしょ!よかったー、ちゃんとお姉ちゃん来て」
夕雨がいて、少し安心した。
あの何も見えない空間で、"声"が言ってたのは本当だったんだ、って。
・・・あ、そういえば、こんな薄暗い場所で夕雨は私を待っていてくれたんだろうか。
「え、何、待ってたの?」
「ほんの少しだけね」
「そっか、ごめん」
「だから少しだけだってば」
通常営業すぎて笑えてきた。
やっぱり私達ってタフだなぁ。
こんな状況なのにいつも通りでいられるんだから。
2人でひとしきり笑ってから、夕雨が私に尋ねてきた。
「ねえお姉ちゃん、ここどこか知ってる?」
「え、聞かなかったの!? ・・・HUNTER×HUNTERの世界、だって」
「・・・えっ」
HUNTER×HUNTERの世界。
あの"声"は危険な場所って言ってたけど・・・。
よく考えれば、そんなに頻繁に念能力者(=危険な人)には会わない気がするんだけどな。
「・・・ま、いっか。 ねぇ、これ、何だと思う?」
相変わらずあっさりした妹に口角が上げる。
ちなみに夕雨の言う"これ"とは、私たちの足元に転がっている鞄のこと。
夕雨が言うには、気が付いたら2つ転がっていたのだとか。
「・・・開けてみる?」
「開けてみよう」
それぞれ自分に近い鞄を漁ってみる。
中から出てきたのは、それぞれの服装によく合う鞄。
「「・・・・・・。」」
鞄の中から鞄って・・・。
気を取り直して、とりあえず鞄を身につける。
私は斜め掛けのタイプのポーチを、夕雨はリュックサックを。
元の鞄を更に漁ってみると、何か小さな本が出てきた。
「お姉ちゃん・・・」
「夕雨もあった?」
「うん」
タイトルは、『九重 朱雨の能力について』。
夕雨のは朱雨が夕雨に変わっただけのもの。
「どうする、これ?」
「・・・今度で、いいんじゃないかな?」
「そだね」
正直、今見るのが面倒なだけなんだけど、ね。