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----朱雨side
「あら、あんたは魚取らなくていいの?」
やる気はないし、誰もいないしで、少し睡眠でも取ろうかと思った。
その矢先にメンチさんに聞かれた。
「・・・私じゃあなたを満足させられない。それがわかってるのに、やる意味なんてありますか?」
私は想像力、発想力に乏しい。と思う。
夕雨は何か思いついていたみたいだけど、私にはそんな面倒なことができない。
どうせ卵の試験があるんだから。
「この試験、発想力を試すものでしょう?」
「そうよ」
「じゃあ、尚更私には無理ですよ」
ふっ、と笑ってみせる。
「どうして?」
「私、スシを知ってますから。形や材料くらいなら。だけど、作れないんです」
スシを知らなければ、可能性はあったかもしれない。
・・・原作を読んでいる時点で、その可能性は0だけど。
「作れないからといって、別のモノ・・・自分で0から考えたスシなんて作れません。スシを知っているからこそ、スシの原形を崩せないんです」
「・・・あんたも考えてんのね」
「それはどうも」
メンチさんが肩を竦めたのを見て、私は調理場の隅で寝る体制に入る。
「ねえ、あんた」
・・・メンチさんは私の睡眠を邪魔する気だろうか。
「寝るならこっちで寝れば?そこ、他の受験生の邪魔よ」
「あ・・・はい」
言われてみれば。
それに、指差された場所は、メンチさんの座るソファーの端だった。
・・・気、使ってくれたんだ。
そっと腰掛けて、他の受験生から見てもあまり目立たないように、絶をしてから今度こそ眠る体制に入った。
多分私が纏をしてる時点で、メンチさんには私が念を知ってることはわかるはずだから、絶をしても問題はないだろうし。
・・・さあて、しばらくの間寝るとしますか。