cellphoneさま提出
( 学パロ )



「あ、……お、おは…よう……」

「お……おう、……」

教室に入ると、ばったり会った彼氏のゾロくんにぎこちない挨拶をした。


「えっと、じゃ、じゃあ……」

「ああ…」

そそくさと自分の席に向かうと、親友のナミが大きなため息をしてあたしのおでこを小突いた。


「あいたっ……」

「アンタたち、ホントに付き合ってるわけ?」

「え、あ………うん」

改めて聞かれるとやっぱり恥ずかしくて、思わず俯いた。


「一緒に登校してるとこ見ないし、喋ってるとこも滅多に見ないわよ?」

「朝はゾロくん部活があるし、学校ではなんかその…恥ずかしくて……」

えへへと笑うと、ナミはまた大きくため息をついた。

「ホントに信じられない。アンタたちって、ちゃんと上手くいってるの?」

「う…うん、大丈夫。…だって毎日メールしてるし、電話もしてる…よ?」

実はあたし、極度のあがり症で、面と向かって話すことが苦手なのだ。

メールや電話ならいくらでも大丈夫なのだが、やっぱり顔を見ると、緊張してしまう。
そのためゾロくんとはキスは勿論、手だって繋いだことがない。お話するのも一言二言。



ブブブ ブブブ――

不意に携帯が震え、メールが入る。ゾロくんからだった。


『おはよ。昨日言ってたノート借りてもいいか?』


あっ!と小さく声をあげ、あたしは一人でコクコク頷きながら返信をした。


『おはよう!うん、今から渡せばいいのかな?』


座ったままちらりとゾロくんの方を見ると、バチッと目があった。
携帯を片手に、こちらを見つめるゾロくんは、とってもカッコイイ。あの大きな手も、鍛えられた体も、整った顔も、全てが素敵で、キラキラ輝いている。
刹那、ぶわっと顔が熱くなるのがわかった。目を逸らそうとすると、ゾロくんは小さく頷いたので、あたしも小さく頷く。

『おう、頼む』

携帯をパタンと閉じると、ナミにちょっとごめんねと言って、鞄からノートを取り出し、ゾロくんの席に向かった。


「あ、えっと……コレ」

「サンキュ」

あたしは一瞬ゾロくんを見てノートを渡すと、直ぐに自分の席に戻ろうとした。
しかし腕をガシッと掴まれてしまった。

「あっ、えっと……あのっ」

ドキドキと鼓動が速くなっていくのがわかった。あたしは足を止め、ゆっくり振り返る。
しかしゾロくんの顔は恥ずかしくて見れない。


「    」

いつもの優しい低い声であたしの名前を呼んだ。もうドキドキしすぎて心臓が破裂しそうだ。

そんなあたしを余所に、ゾロくんは掴んでいた手をゆっくり下げていき、あたしの手を握った。しかも、その、あの、えっと…所謂カップル繋ぎと言うやつで。

「っ………!!」

「今日は、部活休みだから…一緒に帰ろうな」

ガッと勢いよく顔を上げると、ゾロくんは照れ臭そうに笑って、繋いだ手と反対の手であたしの頭を撫でていた。

そしてあたしの思考回路は、完全に停止してしまった。





停止した脳、再起動
(どうやらドキドキが容量オーバーです)






2012.03.25.15:48


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