◇現代パロ
(沙夜様4800番キリリク)



この前ばったり地元の駅で会った旧友に、今度飲みに行かないかと誘われ、特に断る理由もなく、飲みに行こうという口約束をした。

携帯番号を交換して、そのまま別れ、全く連絡がなかった。しかし今、ホントにまさに今この瞬間、なんの前触れもなくその旧友から連絡があった。



「おう、こっちこっち!」

顔を真っ赤にさせて満面の笑みでこちらに手を振る彼は、あの頃と全く変わっていなかった。
学生時代から明るくて人懐っこいくせに、やるときはやる男で、でも正直鬱陶しい。
彼に何度振り回されたことか…現に今だって…

「ちょっとエース!今まで連絡しなかったくせに、突然してきたと思ったら、今飲んでるから来い?ふざけないでよね」

「悪い悪い、なんか久々に手鞠の顔見たくてよ!」

無邪気にそんなことを言うこの男は、あたしを落とそうとしているのだろうか…いや、もしそうならありがたいが、絶対にそんな気はないのだ。


「まあまあ、落ち着くよい。久々に会ったんだ、とりあえず飲むよい。」

そう言って場をなだめたのは、マルコ先輩だった。懐かしい。
エースとよく一緒にいて、とても面倒見がいい優しい先輩。
スーツを着ていて、仕事帰りなのが見て取れた。


「あ、マルコ先輩…相変わらず素敵ですね!」

「そういう手鞠こそ女らしくなって、綺麗だよい」

そんな臭いセリフが似合うのは、先輩がずば抜けていい大人の雰囲気を醸し出していたからなんだろう。

「ロロノアもそう思うだろい?」

「っ…?」

ロロノア、それってまさか…
そう言って振り返ると、ゾロくんが優雅にお酒を飲んでいた。
あの頃と全く変わらない。いや、でもとっても大人になっていて、すごく素敵……


「ん、ああ…」

素っ気なくかわされたけど、少し照れて目を反らすゾロくんに少し期待してしまう。
もしかして…なんて、自惚れすぎかも。


「手鞠ー」

ゾロくんと見つめあってると、後ろからエースが抱きついてきた。

「ちょっ、エース?なにしてるのよっ…」

「やっぱ手鞠の匂いすきだ。なんかいい匂いだよなあー」

ベロンベロンに酔っているせいかエースはボディタッチがいつにも増して激しい。

「ちょ、エース近いって…!」

エースはもたれかかるように、あたしの首すじに顔を埋めてきた。
吐息が首に当たってくすぐったい。

「ひゃっ…」

「エー「おい、いい加減にしろよ」」

マルコ先輩がエースを静止しようとして、それより前にそれを止めたのはゾロくんだった。


「お前飲み過ぎだ。弱いんだから、そんなに飲むんじゃねぇよ」


「あ、ありがとうっ……」


そっとあたしとエースに壁を作るように、あたしを背中に回したロロノアくん。
大きな背中が、とても懐かしい。あの頃と変わらない。いつもあたしを助けてくれたヒーローの背中。
あの頃の記憶と共に、あの時の感情まで蘇ってきた。


ドクン、ドクン、


脈打つ心臓の音が心地よく感じる。

愛しい、この人が…ロロノアくんが、やっぱあたしすき。



そんなことを思っているうちに、男たちは何やら帰る支度。

「え、飲まないの?」

「俺ら先にもう飲んでたんだよ」

「悪いけど、俺はエース送ってくよい。ロロノア、夜道危ねェから手鞠を家まで送ってやるよい」

そういってマルコ先輩はエースの荷物と自分の荷物を持つと、エースを抱えて店を出て行った。


「……あたし、来たばっかなんだけどな」

苦笑すると、ロロノアくんが振り返り罰が悪そうに尋ねてきた。


「呼び出したのに悪かったな。ちょっと飲んでくか?」

「ううん、元々そんな飲む気じゃなかったからいいの」

じゃあ帰るかとお金を支払おうとすると、お連れ様がお先に払われましたよと丁寧に言われた。
マルコ先輩って、さりげなくかっこいいよね。なんて笑いながら、あたしたちは帰路を辿った。


「ってか、この辺りまででいいよ?ロロノアくんもたくさん飲んでるんでしょ?早く休んだ方がいいよっ」

「夜風に当たってた方が酔いがさめる。それに手鞠を送るって約束したからな」

男に二言はないって、昔よく言ってたなあ…
何だか懐かしくて、ふふって笑ってしまった。

「じゃあ、お願いしようかな」

「おう」

彼の横顔はほのかに赤く染まり、とても愛らしかった。




蘇る熱情






2013.02.16.18:03


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