◇長編ヒロイン ー 白髭に拾われたver.
(4444番さはら様キリリク)
あたしは死んだ方がいい人間だったのだとずっと思ってきた。お姉ちゃんが自分のせいで死んで、大好きな人を傷つけた。
だから生きる価値なんてないし、どうやって生きて行こうか悩んでいた。
ゾロは強くなって島を出ていき、あたしも彼を追うように島を出た。
お姉ちゃんみたいに剣はうまいほうじゃなかったから、道場にいるのが辛かった。
一人で旅をして、やっぱりあたしはゾロしか愛せないのだと気づいた。ただ大好きで、大好きで、キラキラ輝いていた彼が、すきだった。
もう一度でいいから会いたくて、一目だけでもいいから見たかった。
でも海は広くて、彼がどこにいるかなんて、全然わからなかった。
「手鞠、なに見てるんだよい」
「あ、マルコさん……」
あたしはとっさに持っていた紙を隠した。
「ロロノアの手配書見てたのかよい?」
「あ、ははっ…見えちゃいました?」
苦笑いして手配書を広げた。
そこには愛しい彼の姿がうつっていた。
麦わら海賊団剣士、元海賊狩りのゾロ。
彼はお姉ちゃんとの約束にどんどん近づいているらしい。世界一になること。ホントに、彼ならできるような気がする。
「そう言えば、ロロノアに会いたくて海に出たってエースから聞いたことあるねい」
「…はい、きっかけは確かにそうです」
確かにゾロに会いたくて海に出た。
会うのがあたしの目的で、夢だった。
たまたまニューゲートさんに拾ってもらって、今こうして白髭海賊団のメンバーとしてここにいる。
そして彼らと過ごすうちに……
「でも今は、ゾロに会いたいから此処にいるんじゃなくて、大切な仲間が此処にいるから、あたしは此処にいるんです」
ニコッと微笑むと、マルコさんは満足そうに笑って、あたしの頭にデコピンをした。
「いたっ……」
「当たり前だよい。俺らといて楽しくないわけがないよい」
マルコさんはニヤリと笑って、あたしを突然抱き上げた。
「え、ちょっ…何するんですかっ!」
「敬語、いい加減やめろってこの前言っただろい」
「うぐっ……」
マルコさんはそのまま不死鳥姿に変化すると、あたしを背中に乗せたまま空高く飛び上がった。
「ひいっ………」
「ハハハ、手鞠の高所恐怖症って噂はホントだったんだねい」
クスクス笑ってくるマルコさんにあたしががっちりしがみつき、半泣きで目を固く閉じたままポカポカ殴った。
「ばかばかっ、マルコさんのばか!早くおろせ、ばかーっ」
「ハハハ、不死鳥だから効かないよい」
「もう、マルコさんなんて嫌いーっ」
なんて言ってみたけど、本当は嘘。
この大きくて優しい背中も、マルコさん自身も、ニューゲートさんも、だいすき
ここにいるみんな、だいすき
まあ、だいすきなんて絶対言ってあげないけどね
嘘つきなリップ
2012.12.22.17:26
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