(4200番有吉様キリリク)



暑は夏い。
…ん?なんかおかしい。あ、夏は暑い。

思わず変なことを言ってしまうくらい、あたしの頭はどうやら上手く機能していないようだ。


「あーつーいー」

夏島が近い今、太陽が嫌というほど、元気にこんにちわしている。
もう少しおやすみしていてもいいんだよと誰か言ってあげてくれ。切実な願いである。


サンジに頼んでかき氷を作ってもらったり、フランキーに頼んで巨大扇風機を作ってもらったが、どれもいまいち。理由は単純明解。今のあたしの服装に問題があるのだ。

「フランキーの扇風機涼しいぞ!」

ルフィの涼しそうな顔がとてもうらやましい。
キミの爽やかさで少し涼しく感じーーーごめん、やっぱ暑いや。

「風を感じないです、はい。」

そんなあたしを他所に、ルフィ、ウソップ、チョッパーのおバカトリオは楽しそうに、そして涼しそうに扇風機の前で風に当たっていた。

「「「あぁ゛〜〜〜〜」」」

扇風機に向かって声を出し、声が変わるのを楽しむ3人。
うん、それやっちゃうよね。

そしてそれをおもしろそうに見つめるロビンと、ため息混じりで見るナミ。

「ちょっと!アンタたちが陣取ってるせいで、コッチに風こないじゃない!」

ナミの鉄拳を食らい、3人死亡。チーン。

「アンタもそんな格好しないで。暑苦しいわ!」

怒りの矛先がまさかのあたしに向いてしまった。

「暑いなら半袖着なさいよ!スカートはけとは言わないから、短パンはきなさい。」

「別にスカートはきたくないわけじゃないもん。太い足晒せないから、短いのはけないだけ。」

「じゃあ上だけでも半袖にしなさいよ」

「ナミやロビンみたいに、肌を露出してもずっと白いわけじゃないの!太陽に当たっただけ真っ黒に焼けてくのおおおお」

汗をダラダラ流し必死に抗議するあたしに、ナミは大きくため息をついた。


「別にアンタの足は太くないし、日焼けが嫌なら日焼け止めあげるわ」

ちょっと来なさいと半ば無理矢理連れ出され、ナミに渡された洋服と日焼け止め。


こ、こんなのきれませんっ!
まぶしすぎるっ…!!

渡されたのは真っ白のマキシ丈ワンピ。
た、確かに足は隠れるけども…


あたしは着れないとずっとだだをこねていたが、半ば無理やりナミに洋服を脱がされ、着替えさせられた。




「どう?これで涼しくなったんじゃない?」

ナミの後ろに隠れるようにして部屋を出てきたのはいいが、みんなの前に戻ると、ナミが勝ち誇ったようにあたしを前に出した。


「「「……おおーっ!!!」」」


驚いてはいたけど、やっぱりみんなの目が珍しいものを見ているように、少しぽかんとしていた。


「や、やっぱ似合わないよね…ごめん、見苦しいので着替えてきます…」

あたしがそう肩を落とし、クルリと体を反転させようとすると、ルフィが突然抱きついてきた。


「いいじゃねえか!お前すっげー白似合う!天使みてぇだぞ!」

ニシシとはにかむルフィが、それはもう眩しくて眩しくて…

「ええ、ルフィの言うとおりとても似合うと思うわ」

ロビンも微笑んでくれた。
みんなも次々に可愛いだの素敵だのあたしには勿体ない言葉をかけてくれて、なんだかとっても照れ臭い。


「ってか、ルフィ!!テメェ何どさくさにまぎれて手鞠ちゃんに抱きついてんだ!」

「なんか勝手に体が動いちまったんだよ!」

へらへら笑うルフィを本気で殺ろうとするサンジくんに思わず笑ってしまった。


なんかネガティブな自分が、ちょっと馬鹿らしく感じた。
もっと楽しく生きればいいのかもって、ちょっと思った。





「あんたはあんたのままでいいのよ」

ナミはあたしの心を読んだのか、ふと遠くをみながらそう呟いた。

「え?」

「日に焼けた手鞠も、手鞠じゃない。アンタはアンタなの。誰かと比べなくていい。こいつらは手鞠がすきなのよ。大切な仲間。だから無理して背伸びしなくたっていいのよ」

背伸び、しすぎてたのかもしれない。
ナミやロビンと比べ、肌も白くないし、胸もない。
全てが劣っていて、少しでも二人に近づきたかったんだと思う。

「あたし、もう我慢しない!あたしはあたしらしく生きる!」

あたしがそう笑うと、みんなも太陽に負けない笑顔でこたえてくれた。








太陽よりもっと
(素敵な笑顔がここに咲く)





2012.11.20.0:57









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