(りんご様2345番キリリク)
「おいお前、いつまで仕事サボって俺の部屋にいるつもりだ、ブヮァァアアカ!」
黒革の高級感溢れる来客用ソファーにゴロリと寝転び、スパンダムを見つめるのは、闇の殺し屋CP9の一人カクの恋人である手鞠である。
現在部屋には二人きり。しかもキャミソールに短パンという薄手の服装をしている魅力的な女性を前に、男なら誰しも興奮しないわけがない。
しかしここにいるスパンダムという男は、罵声と共にその魅力的な女性を蹴ろうとしていた。
「ちょうかーんっ…!もうカクたちが任務に出て一週間ですよ…」
甘い声を出しながらゴロリと寝返る手鞠のへそが、ちらりとスパンダムを惑わす。
蹴ろうとした足を元に戻し、真顔になり手鞠をじっと見つめながら彼女に歩み寄る。
「…手鞠、カクなんかじゃなくて…」
そういってそのまま彼女をソファーの上で組み敷こうとした瞬間、扉が勢いよく開いた。
バタンッ…!
「長官、セクハラです」
「ブヮァァァアアカ!こ、これは……!」
カリファがカツカツとヒールの音を鳴らしながら入ってきたのと同時に、けだるそうに入ってきた面々。
そこにはもちろん、彼女が待ちわびていた愛しい姿もあるわけで…
「あ………」
彼女は覆いかぶさる長官を蹴飛ばし、一目散にその胸に飛び込む。
「おかえり、カク!」
「ああ、なんじゃ手鞠か。ビックリしたのう。…ただいま」
カクは優しく手鞠の頭を撫で、微笑んだ。
「怪我はしてない?ちゃんとご飯は食べてた?」
手鞠はバッと体を離すと、カクの体をあちらこちら触り始める。
心配そうに何度も何度も確認。
「ワシは手鞠が居なくて心が病気になりそうじゃった」
そう言ってカクは、周りの目を気にせず濃厚なキスを浴びせた。
…いや、うん。TPOだTPO。時と場合と場所を考えてくれ。そこにいた皆がそう思った。
「んっ……ふぁ…」
手鞠の甘い声が、男たちにとっては毒でしかない。
「ん…」
名残惜しそうに唇が離れたのと同時に、ルッチとカリファが大きく溜息をついた。
ジャブラとスパンダムに関しては、頬を赤く染めたまま時間が止まっている。
「やだ、足りないよっ…」
「…ふふっ、かわいいのう。じゃが長官に聞きたいことがあるからのう…さっき手鞠を襲ってるように見えたんじゃが…」
笑顔のカクは恐ろしい。
カリファの強烈なキックより、真顔のルッチより恐ろしい。
「ぶ、ブヮアアアカ!そ、れは…気のせいだ!」
「長官、ワシを怒らせたいんかのお?」
じわりじわりと笑顔のカクはスパンダムを追い込む。
上下関係は明らかに、逆転していた。
「やーだっ!カク、長官じゃなくてあたしを見てよ…」
しかしそれを妨げるように、手鞠がカクの背中に抱き着いた。
上目でカクを見つめると、カクは満足そうに笑って、手鞠を抱き上げた。
「フフッ、それもそうじゃのう。長官をいじめるより、手鞠をいじめよう」
「えへへ、もうカクったら…」
そう言ってイチャイチャしながら部屋を出ていった二人に、皆はまた始まったよと大きくため息をつくのだった。
桃色エブリデイ
(お、俺は長官だぞ、ブゥヮァァアアアカ!)
2012.05.30.16:41
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