彼の背中が好きだった。
いつも護ってくれた。だから今度は、真っすぐとした誠を背負った彼の背中を、あたしが護ってあげたい。


「………土方さんっ」

あたしは弱々しく震える彼の背中に抱き着いた。

平助くんに山南さん、斎藤さんに源さんに山崎さん、そして沖田さんと近藤さん――
みんなバラバラになってしまった。

土方さんの大切な人が、こんなに居なくなってしまったのだ。

あまり一緒に過ごす時間はなかったあたしでさえ、こんなに胸が裂けるくらい苦しいのだから、彼は今、一体どれだけの苦しみを背負っているのだろうか。


「……っ………」


土方さんは決して言葉を発しなかった。
だけど今まで鬼の副長と呼ばれた彼が、こんなに弱々しい背中になったのは初めてだった。


そして土方さんは、ぼそりと呟いた。

「……結局俺は、何にも護れねぇんだな」


自嘲気味に笑った彼に、あたしは手を回す腕の力を強めた。


「…そんなことないです。だって少なくともあたしは、護ってくれてるじゃないですか…!!!」

そうだ。この背中にあたしは幾度となく助けられた。
父様が死んだ今、護る理由なんてないのに、あたしを護ってくれてる。


「…それに、土方さんはみんな1番護りたかった誠を護ってます。土方さんが生きることが、みんなの意志です」

だから今にも切腹しようとする考えは捨ててください。

「………ふっ、アイツら俺だけにこんな重荷残しやがって」

言葉は切ないものだったけど、少しだけいつもの土方さんに戻った気がした。


「…それに、土方さんが居なくなったら、あたし生きていけません」

あたしがそういうと、土方さんはくるりと反転して、あたしの頭を優しく撫でた。
彼の瞳はとても悲しいものだったけど、力強さが戻っていた。

「…お前は、ホントに俺が居ないとダメなんだな?」

改めて聞き返すなんて反則だ。
しかも、いつもみたいに意地悪なあの顔で

「……もちろんですっ」

少し照れ臭かったけど、言葉にするのも大切なことだから、意を決して言った。
すると土方さんは優しく笑って、あたしを抱きしめた。

「お前がいなかったら、俺はとっくに近藤さんの後追ってるよ……ありがとな」

少しでも彼の為になれているのだとわかり、思わず涙腺が緩む。
たくさん泣いてもう涙は枯れたと思ったのに…涙は枯れない。


「土方さん、あたしはずっと側にいます。何処にも行きません。だから土方さんも、絶対何処にも行かないでください」

「ああ。…俺がどっかに行ったら、呪われそうだしな」

ふっと笑った彼に、あたしは胸が温かくなる。
あたしやっぱり、土方さんに出会えてよかった。
怖くて冷たい人だと思った。だけど本当は誰よりも優しい人で、温かい人だったんだ。




これから先は
(あたしも貴方を護ります)




2012.02.04.11:19


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