わたしはゾロと喧嘩した。
喧嘩の理由は忘れちゃった。でもホントに些細なことだったと思う。
例えば、わたしが寝ている間にゾロが勝手にキスをしたとか、ゾロがわざと見える首筋にキスマークをつけたとか、本当は嬉しいんだけど、わたしが強がって喧嘩になる。


「いい加減機嫌直せよ」
「ふんっ」

ゾロがわたしを慰めに来るが、わたしは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

「おい緋奈、何怒ってんだよ」
「わかんない!」
「ハァ?」
「忘れたもんっ」

正直にわたしが言うと、ゾロは小さく笑って、両手を広げた。

「なに?」
「こいよ」
「いーやっ!」
「ったく…」

ゾロはさっきまでの困った顔から一変して、楽しそうに笑った。
そしてわたしの腕をぐいっと引っ張ると、気づけばわたしはゾロの胸の中。

「きゃっ!ちょ、ちょっと!」
「暴れんなって」
「何すんのよ、変態セクハラ!」

わたしが思ってもいない暴言を吐いても、ゾロは終始笑顔のまま。

「緋奈」
「ちょっ、と…耳元で呼ばないでよ」
「緋奈」

くそっ、これわたしが1番ドキドキするってわかっててやるんだから!


「あ、…いいもんやるよ」

ゾロはポケットからガサガサと何かを取り出すと、口に入れた。

「くれるとかいいながら、自分で食べてるじゃん」
「欲しいのかよ?」
「…別に」
「素直じゃねェな」

そんなの自分がよくわかってる。
だけどゾロはニヤリと笑って、わたしに口づけをしてきた。

口内は甘いピーチの味に満たされた。カランコロンと、わたしとゾロの口の中を行ったり来たりする小さな飴に気を取られ、わたしは怒っていたことを忘れてしまった。




桃色キャンディー
(そういえばわたし、勝手に飴を取ったから怒ってたのよ)





2012.01/04.16:11


prev | next



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -