どんっ
「きゃ、…ご、ごめんなさいっ!」
本日何回目なのであろうか。通りすがりに人とぶつかってしまった。
別に下を向いて歩いていたわけでも、上を見ていたわけでもない。しいていうなら…今回は、ほら!あのソフトクリーム屋さんに置いてあるウサギの人形が可愛いなって見てたら…
「おい、何処見て歩いてんだ!あァ?」
あああああああっ!よりにもよって、怖いお兄さんにぶつかってしまったみたいです!
「ああ、あのっ…すみません!ホントにごめんなさいっ」
私がペコペコと頭を下げていると、クイッと顎を持ち上げられた。
「嬢ちゃん、俺様にぶつかっておいて、口先だけの謝罪で済むと思ってねェよなァ?」
「え?」
クククと男の人たちは笑うと、私の腕を掴んだ。
ひっ…こ、殺される!?
「あ、あのっ…本当に申し訳なかったと心から思ってます!」
「そういうのは態度で示してもらわねェと!」
そう言って薄暗い路地に連れ込まれそうになった。
運がない女だとはわかっていたけど、こんなにも不運が続くだなんて…
男の力に敵うわけなく、私は引きずられるように路地へと吸い込まれる。
刹那、低い声が後ろから聞こえた。
「おい、テメェら女相手に何してやがる」
腰に刀をぶら下げていて、彼が剣士だということがわかった。顔も、何となく何処かで見たことがある。あれ、何処だっけ…?
「何だ、テメェ!あん?」
「謝ってんじゃねェか。それにぶつかったのは、コイツだけの責任じゃねェだろ。お前らが避ければよかったんじゃねェのか?」
ジリジリと歩み寄る男は、私の目の前に来ると、私をかばった。
「あ、兄貴!コイツ麦わらんとこの……」
「グッ……!!こ、今回は見逃してやる!今度あったら、許さねェからな!」
そう言葉を吐き捨てて、男たちは去って行った。
「大丈夫か?」
クルリと振り返った私の恩人さんは、私の顔を覗き込んだ。
っ……………!!
思い出した。この人、麦わら海賊団の剣士、ロロノアゾロ………!
どどどどどどどうすれば!!
一難去ってまた一難。確か彼は海賊。海賊というのは人の財産を奪ったり、人を殺したり、攫ったりすると聞きましたっ!!
「あああああのっ!今お金なくて、でもまだ死にたくなくてっ!できたら売られたりもしたくありません!私なんて運がなくてどうしようもない人間なんです!だから、あのっ!全然売っても価値がないです!ああ、どうかお助けをっ!」
「ハァ?」
「靴でも何でも舐めますっ!だからお助けをっ……!」
ギャーギャーと叫ぶ私は、彼がとても困ったようにため息をしたことに気づかないのであった。
(変なやつ助けちまったな)
神様は私がだいきらい
2013.03.20.14:53
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