愛しいのと同じで貴方が憎い存在だった。いつも貴方は一枚も二枚も上手で、私が貴方に敵うことは一度もなかった。
王家七武海と比べる方がおかしいのだとわらわれるかもしれない。でも彼は七武海である前に、一人の男であって、私の彼氏なのだから。
「いい匂いだね、」
彼に抱きつくと、女の人の香水の匂いがした。決していい匂いなんかじゃない。ただの強がり。
「フフッ」
彼はそれを見透かしたように、サングラスをキラリと光らせ、いつものように笑った。
以前私も、いつも私が嫉妬させられるように、嫉妬させてやろうと彼の目の前で男と歩いてみた。彼はそれを見るなり不気味に笑って、その男を目の前で殺した。いや、殺させた。自殺というカタチで。
それ以来彼に嫉妬させてやろうというバカな考えはやめた。
「新しい匂いだね、初めて嗅いだ」
「鼻がいいなァ、フッフッフ」
彼は満足そうに笑って、私の首に舌を這った。ゾクリと背中がして、でも気持ちいい。彼は私の弱いところを知っている。ビクッと反応する私を楽しむように、ジワリジワリと私をせめる。
「貴方なんて、きらいよっ…」
「フフッ、かわいいぜ。緋奈」
「ばか、きらいっ」
どうせ女なんて、道具程度にしか思っていないんでしょ。貴方の彼女は、私だけじゃないんでしょ?ううん、むしろ彼女なんていないのかも。
「お前は俺から絶対に離れるなよ、緋奈」
「っ、な…にそれ…」
ずるい、そんなのずるい。いつもは命令なのに、こんなときにお願いをするなんて…
「本心じゃないくせにっ」
そういいながらも、私はギュッと彼の首に抱きついた。大きくて太い彼の首。
「まァ、逃げたら捕まえてやる」
貴方に捕まったあの日から、私はもう貴方から逃げる術なんて、きっとないんでしょうね。
まあ、逃げる気もないけど。
今日も鳥籠で鳴く
2013.03.14.23:14
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