「いきなりパートナーを解消したいってどういうことだ、緋奈!」
事務所でリューヤさんと楽しく会話しながらお茶していたところに、私の元パートナーの黒崎蘭丸先輩がやってきた。
「おいおい、黒崎落ち着け!いきなりどうしたんだ」
「コイツが勝手にパートナーやめるとかいうわけわかんねェ手紙置いて出てくから!」
リューヤさんは全く状況を掴めず、頭をかかえていた。
私は必死に平静を装い、下を向いて黙った。
「どういうことだよ!納得行く説明しねェ限り、パートナー解消は認めねェ!」
パートナーになってくれと頼んだのは私の方で、中々認めてもらえず、少しずつ少しずつ先輩の仕事のお手伝いをしながら心の距離を縮め、やっと最近パートナーと認めてもらえたところだった。
そんな矢先の出来事で、先輩も戸惑っているのだろう。少し声が震えていた。
私はゆっくりと顔を上げた。
先輩の真剣な眼差しが、私だけを射止めている。
「っ、…や、やっぱり、先輩とはお仕事できませんっ」
目をそらしてそう言った。
先輩とはすごく仲良くなれてきて、他の先輩方にも私たちの信頼し合っている関係はすごく伝わっていたらしい。
でも、でも私は……!!
「黒崎がなんかしたのか?」
リューヤさんもなんとなく状況を把握してきたようで、話に参加してきた。
私は大きく横に首を振った。先輩は悪くない。何にも悪くない。
「じゃあなんでだよ!お前が俺の歌声すきだって言ったのは嘘だったのかよ!!」
裏切られたとでも言うように、先輩の瞳に光が消えて行った。
違う、先輩違うんです。
「先輩見ていると、私だめなんです」
「だめってなにが!」
「胸がずきんってして、それからきゅんってするんです。こんなの初めてで、全然集中できなくてっ…!このままじゃ私、先輩に迷惑かけちゃ…」
刹那、おでこを軽く殴られた。
えっ?と思い先輩をみると、ほんのり顔が赤かった。
「ったくお前らなぁ…絶対社長にバレるんじゃねぇぞ」
リューヤさんは面倒な事になったと頭をかきながら、その場を後にした。
「えっ、えっ…?ど、どういうことですか?」
「……お前は何もわかんなくていい。と、とにかくパートナーは解消しねェ。帰るぞ、送ってく」
そう言うと先輩は私の手を優しく包んだ。その、つまり手を繋いだということ。
やばい、またきた。
ずきんときゅん
2013.03.13.16:17
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