貴方が好きだった。ただただ好きだった。
でも貴方はアイドルで、私は作曲家。アイドルに恋なんて、もちろんご法度。わかってたけど、止まらなかったの。

あの頃はみんなに隠せば大丈夫だって思ってた。でもね、違うよ。ファンを欺いて、みんなを騙して…これ以上大切な人を傷つけちゃダメなんじゃないかな


「貴方は、此処に必要な人。私は売れない作曲家。もう答えは決まってる」

最初から結論なんて出ていた。
彼の為にできること、この事務所のためにできること。


「さようなら、」


誰もいない貴方の部屋で小さくそう呟いて、私は自分のもの全て持って部屋を出て行った。
もう戻らない、この部屋にも、あの事務所にも。


さようなら、大好きでした。


貴方に何も告げずに出て行くこと、きっと貴方は怒るんでしょうね。
でもね、これしか私には思い浮かばなかったの。


ごめんね、ありがとう。




こうして私はただの一般人になったーー




なにもなにも残さずに







2013.03.12.20:58


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