私が貴族でなく一般市民だから、愚民や貴様などと呼ばれるのか。正直蔑まれ、罵られ、見下される理由がわからない。
私は真面目に頑張っているだけなのに。
「デビューおめでとう、後輩ちゃん!」
「まあ君にしては頑張ったんじゃないかな」
「熱いハートを感じたぜ!とりあえず肉食うか!」
事務所の先輩が私のデビュー祝いに、小さなパーティを開いてくれた。
もちろん言い出しっぺは寿先輩。面倒見がよく、たくさん優しくしてもらった。パーティをしようと先輩たちを率先して集めてくれたのも、寿先輩だった。
肉が食えるなら行かないわけないと着いてきた黒崎先輩には、すごくお世話になった。最初は冷たく拒絶されていたのだが、真剣に曲を作りたいという私の熱意が伝わり、アドバイスをたくさんしていただいた。
美風先輩はいつも厳しいお言葉なんだけど、その言葉に嘘や誤差はなく、正確な感想を述べてくださった。
どの先輩も優しいのに、一人だけ私に嫌みしか言って来ない人がいた。
「ふん、愚民のためにパーティを開くなど時間の無駄だ。このようなことをする暇があるなら、プロとしてしっかり働いたらどうだ」
この人は私のパートナーのカミュ先輩。社長の「Youたち今日からパートナーでーす」という軽いノリで、パートナーになってしまった。
執事アイドルというのは仮面をかぶった仮の姿。実際は俺様暴君の毒舌野郎。
「その愚民のパーティに来る先輩も愚民じゃないんですか?嫌なら来なくてもよかったですけど!」
ふんっと鼻を鳴らし、そっぽを向くと、カミュ先輩は涼しい顔で言ってきた。
「貴様が、俺が来ないと寂しいとどこかの誰かに相談したと小耳に挟んだから仕方なく来てやっただけだ。寧ろ感謝しろ」
「お前にもそういう一面があったとはな」と先輩は意地悪な顔でニヤリと笑った。
…は?先輩が来ないと寂しい?そんなこと言った覚えはない。
「そんなこと言ってないけど…寧ろ先輩こそ、ホントはちゃんとお祝いしたいって思ってるって聞きましたよ?全く、素直になればいいのに」
「そんなこと言ってはおらん。」
「ミューちゃんも後輩ちゃんも、まあまあ落ち着いて!ご飯食べようよ、ねっ?」
寿先輩は慌てて間に割って入ってきた。が、それが余計に事態を悪化させた。
「寿、話を反らすな。一体どういうことだ。貴様嘘をついたのか」
「え、な、なんのことかな?あっれー?僕ちんわかんないや!」
「も、もしかして…!寿先輩、カミュ先輩がお祝いしたいって思ってるって嘘だったんですか?」
なんとなく話はつながった。
私は寿先輩から、カミュ先輩がお祝いしたいって思ってることを聞いた。逆にカミュ先輩は、私がお祝いにしてほしいと言っていると聞かされたわけだ。
私たちはお互い意地を張るため、「カミュ先輩が来たいならどうぞ」と言った。きっとカミュ先輩もアイツがそこまでいうならと、言って来たのであろう。
まんまと騙されていたわけだ。
「だって、ミューちゃんも、後輩ちゃんも、素直にならないんだもん!僕ちゃん頑張ったんだよ!アイアイ褒めて、褒めて!」
「なんで僕に話を振るの。巻き込まないでくれるかな」
「アイアイつめたーいっ!」
「まあでも、嶺二の言うとおり二人ともプライド高すぎ。カミュはさ、いくら緋奈が好きだからっていじめすぎ。緋奈はさ、鈍感すぎ。」
「えっ?」
「っ……」
先輩が私をすき?そんなわけ…だって、ほら!いつも私を…
「な、何をいう!」
「そんなわけないじゃないですか!だ、だって…」
私たちは顔を赤くして、ちらりとお互いを見た。目がバチッと合って、思考が止まった。
「ホント、君たちってツンデレだよね」
ツンデレ×ツンデレ
2013.03.11.12:57
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