◇現パロ


好きになるとは思ってなかった。
こんなに夢中になるとは思ってなかった。


「大丈夫かい?そんな暗い顔して…どうしたんだい?」


そう言って声をかけてきたのはあっちで、正直そんなにタイプじゃなかった。いつものあたしなら断っていたし、興味を示さなかった。
でもあの日はとても嫌なことがあって、落ち込んでいて、軽いノリでついていった。アドレス交換して、毎日メール。暇なときは彼とメールをして、なんどか遊んだ。そしたら告白されて、付き合うことになった。でも正直好きじゃなかった。気になる程度。いい人だけど、愛してるって言えるほど、彼を知らなかった。

でも同じ時間を過ごせば過ごすほど、彼に惹かれる自分がいた。
金色の髪も、細い指も、変な眉毛も、気づいたら全部好きになってた。

ふと一人になれば、すぐにサンジの顔を思い出し、逢いたくなった。ただただ彼が愛しくて愛しくてたまらなかった。
お互い忙しいからといって、会うのは夜。終電に乗り彼の家に行き、朝になって帰る。そんな感じだった。
ベットの上では激しいくせに、普段はすごく優しいものだから、またそのギャップにやられてしまう。

でも会うのはほとんどが夜。
昼間に会うのはごくたまに。そんな毎日が続けば、不安も大きくなっていった。

浮気してるんじゃないかって不安が、次第に膨らんでいった。
信じたい。彼を信じたい。でも不安が消えることはなかった。


そして大きく膨らんだ風船が、割れそうになったとき、事件が起きた。

たまたま用事で彼の家の最寄り駅に行ったとき、彼に会ってしまったーーー知らない女の人と歩いているときに。


「さ、サンジ…?」

あたしが声をかけると、サンジはひどく驚いた顔をして、そのあと困った顔をした。
その瞬間、あたしの中の風船が大きな音をたてて破裂した。


「サンジくん、この子と知り合い?」

「あ…」

サンジは焦ったように隣にいた女に弁解を始めた。

「あ、知り合いっていうか…」

あせるサンジを見て、あたしは浮気されていたのだと気づく。

あたしの頭の中は怒りでいっぱいだった。
怒鳴ろうとしたとき、サンジが衝撃の一言を発した。


「彼女は元カノ。復縁しようってしつこくて」

は?元カノ?
ドウイウコト?

頭がフリーズした。だってついこの前、2〜3日前、会ってあたしたちは体を重ねた。愛してるって何度も言っていたのに、なによそれ…


「俺、確かに緋奈は好きだったけど、今はナミさんしか考えられないって言っただろ?もう一回ハッキリ言うけど、緋奈にはもう会わないから、ごめんね」

サンジはそう言うと、ふわりとナミさんと呼んだ女に微笑んで横を通り過ぎていった。


そのとき、全てを悟った。
浮気をされたんじゃない。
あたしが、浮気相手だったんだ。


最初から薄々感じていた。
でも彼を信じて、恋に落ちたあたし。

彼が悪いんじゃない。
彼に恋をしてしまったあたしが悪かったんだ…

浮気されたんじゃない。
あたしが遊びだったんだ。



そして楽しそうに去っていく二人を目の前に、あたしはまたサンジと出会ったあの日のように、一人寂しく涙を堪えて、地面にしゃがみ込んだのだったーーー




「おい、大丈夫かよ?シけた面して…なんかあったのか?」



そう言って優しくのばしてきた大きな手は、あたしを永遠にこの無限ループから抜けさせてはくれなかった。


「…どこか、ぐずっ…楽しいとこ、連れてって……」




無限ループ







2012.11.23.17:53


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