※いつかこれが正しいと(ヒロイン視点)


いつからだったろう。トキヤがあたしを見る度、一瞬悲しそうな表情をするようになったのは…

あたしはトキヤが好きで、トキヤもあたしが好きで…アイドルと作曲家という立場上、付き合っていることは公にはできなかったけど、みんな全て悟っていたし、応援もしてくれてた。

あたしたちはパートナー以上に信頼し合える関係で、お互いできていないところは指摘し合い、成果がでれば共に喜びあった。


そんないい関係が崩れたのは…そう、確かあたしがトキヤの部屋に遊びに行ったときだ。たまたまHAYATOの仕事でトキヤはいなくて、部屋は音也と二人きりだった。
寮でのトキヤの話とか、最近よく聞く曲とか、本当にたわいもない会話をしていた。
そこにトキヤが入ってきて、彼が勘違いしてしまった。あたしと音也が本当は付き合ってるんじゃないか…付き合っていないにしても、好きなんじゃないか…
彼の疲労もピークだったこともあって、あの時のトキヤは本当に冷たかった。

一応誤解は解けても、彼の中のモヤモヤが全て晴れたわけではなかった。


結局あたしはトキヤにフラれて、パートナーまで解消することになった。


「おはよう、レディ」

「あ、おはよ、レン」

教室でレンが声をかけてくれた。なるべく教室では笑うようにしている。…だってそれが、彼にできる最後のことだから。


「無理してないかい?」

心配そうに小さく尋ねてきた。あたしは小さく笑ってこたえた。

「うん?なんのこと?あたしなら平気だよ」

「お、おい、緋奈…!!お前、トキヤとパートナー解消したって本気かよ?」

翔くんが血相を変えて走って近寄ってきた。


「…あはは、翔くん汗ダラダラだよ?男らしい顔が…」

あたしがにへらと笑うと、翔くんは苦虫を噛み潰したような顔であたしを見つめてきた。


「もしかしてお前ら…先生に…」

あたしは力無く笑って首を振った。

「ううん、違うよ。あたしが、フラれちゃったの。ただそれだけ」

やっぱりあたしなんか好きじゃなかったのかもねと笑うと、二人共困った顔でちらりとあたしを見てから、トキヤの方へ視線をうつした。

誰が見てもわかる。彼は明らかに様子がおかしくて、目の下に隈もでてる。
彼はまた一人で悩んでいるのではないだろうか…だけどあたしが声をかけて、彼を困らせたくもない。
だってあたしたちはもう、恋人でなければ、パートナーでもない。ただのルームメイトで、それ以上でもそれ以下でもないのだから…


「レン、翔くん、これからトキヤのこと…色々気にしてあげてくれるかな?トキヤって頑張りすぎるとこあるから…すぐ無理しちゃうんだよね。トキヤはああ見えてすごい不器用な人だから…」

「「………」」

みんな黙ったままだった。何て返事をしたらいいのかわからないんだろう。
あたしはその場に居づらくなって、トイレに行く振りをして教室を出た。


何処から間違えたんだろう。
あたしたちはまだ愛し合っているのに、どうして隣にいられないの?
お互いがお互いのことを考えすぎて、結局空回り。

好きだから…大好きだから…どうするべきなのかわからなかった。






不器用カップル
(トキヤ、だいすきなんだよ…)





2012.06.26.16:03


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