◇学パロ
天気予報で、今日は晴れると言っていた。だから傘は持って来なかったし、折りたたみ傘も昨日家に持って帰ったばかりだった。
負の連鎖というのは続いてしまうもので、部活を終えたこの時間、昇降口は閑散としていた。
今日は晴れると笑顔で言っていたあの女子アナ、顔がいいからって調子こいてんじゃねぇぞと心の中で暴言を吐いてみた。
しかし何も変わらない。寧ろ雨が気持ち激しくなったかもしれない。
「あーあ」
こんなとき、ドラマだったら『俺の傘貸してやるよ』なんてキザな台詞を残して、傘を差し出してくれる人が現れるのだろう。
私は淡い期待を込めて、少し大きめに呟いてみた。
「ワアー。雨降ってるー。傘忘れちゃったよー」
棒読みにも程がある。
キョロキョロと誰か現れやしないかと辺りを見渡すが、人の気配がしない。
仕方ないかと私は大きくため息をして、激しく振り付ける雨の中へ自ら突っ込んで行った。
冷たく重い雫は、鉛のように痛い。髪や制服は勿論、靴下や靴、あらゆる場所が一瞬にしてびしょ濡れになった。
やっとの思いで最寄駅に着くと、驚いた顔である男子が私を見つめてきた。
「おい、園城寺」
「あ、ロロノア……」
彼は調度傘についた雫を落としている最中だった。
私はびしょ濡れになった髪を手で軽く絞りながら、クラスメートのロロノアに近づいた。
「お前、まさか傘忘れて此処まで走ってきたのかよ?」
「…そうだけど」
私がそういうと、ロロノアは眉間にシワを寄せて、鞄からタオルを取り出した。
「早く拭けって。風邪ひいちまうぞ」
ロロノアとはクラスであんまり話したことがなかった。1対1で話したのは、今日が初めてだと思う。
しかしロロノアはそんな私の頭に、タオルを優しくかけた。
「あ……タオル、悪いよ」
私がタオルを返そうとするが、ロロノアはそれを拒んだ。
「風邪引く前に早く拭けって」
「そんな柔じゃ……くしゅっ」
私がくしゃみをしてしまうと、ロロノアは小さく笑って私の頭にタオルをかぶせ、ガシガシと拭いてきた。
「わっ…」
「ちゃんと拭けよ?じゃあまた明日な」
タオルの間から見えたロロノアは、とても優しく笑って、改札を通って行ってしまった。
高まる心臓を必死に抑える私は、ただただ彼の背中を見つめるので精一杯だった。
劇的レインデー
(タオル、洗って明日返さなきゃね)
2012.05.04.10:13
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