「緋奈、気分はどうだァ?」
キィンキィンと金属音が冷たい地下廊に響き渡る。わたしは反射的に体を固まらせた。
「そんな目をするなんて冷たいじゃねェか、ベイビーちゃん」
彼はフワリと浮き、スーッとわたしの目の前に来ると、俯いていたわたしの顎を簡単に持ち上げた。
両腕は縄で結ばれ、固定されているため、身動きがとれない。
わたしはふいっと目をそらした。
「ジハハハ!いいねぇ〜」
いやらしい表情でわたしを捕らえ、そっと優しく撫でるようにわたしの頬に触れた。
「やっ…めて…くださいっ…」
わたしは震える声で、必死に訴えた。腕を動かし抵抗すると、縄がさらに腕に食い込んできた。
「立場がまだわかってないみたいだなァ?」
「っ……し、シキさま……!」
わたしは小さな声で謝罪をし、抵抗をやめた。
わたしが此処で逆らえば、わたしの父や母、そして村のみんなが殺されかねない。
シキさまはこの空飛ぶ島メルヴィユの支配者。
彼が村の1つや2つ、潰すことは容易いことなのだ。
「ジハハハ!賢い女は好きだぜェ?緋奈、お前は誰のもんだァ」
ゆっくりシキさまはわたしとの距離を縮め、わたしを見つめてきた。触れ合う吐息が恥ずかしくて、こんなに最低なことをされているのにドキドキしている自分が、憎らしかった。
「………シキさま、です…」
わたしの揺れる瞳は、やっとシキさまを捕らえ、そう告げた。
すると刹那、その言葉を待っていたと言わんばかりに熱い口づけがおりてきた。
何度も何度も角度を変えて、舌を絡ませてきた。こんなに激しいキスは初めてで、意識が朦朧としてくる。
そして気づけばわたしの腕を固定されていた縄は外され、苦しくなる濃厚なキスに翻弄されたように、わたしはシキさまの服をすがるように握っていた。
「ん………はぁ……あっ…」
うっすら目を開くと、シキさまは満足そうに笑いながら、わたしの腰に手を回した。
「ジハハハ!緋奈、これからたっぷり時間をかけて愛してやろう」
わたしにもう拒否権なんてなかった。
選択肢は1つ
(貴方だけに、全てを捧げます)
2012.04.13.19:44
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