愛されたいと思うのは罪なんですか
わたしが貴方を愛しいと思うことさえ、許されないことなのですか

それはわたしが、白髭の娘だから?海賊の娘だから?


「ねえ赤犬、コッチを向いてよ」

「貴様は俺が憎くないのか」

「憎いよ、エースを殺した。パパを追い込んだのも貴方。」

赤犬はわたしの顎をクイッと持ち上げると、悲しそうに見つめた。


「何故貴様は海賊の娘なんじゃァ!」

「わたしは今でもパパの娘でよかったと思ってる。マルコたちと過ごす日々も嫌じゃなかったし、それになにより…」

わたしは彼の目をじっと見つめた。


「わたしがパパの娘だったから、今こうして貴方に出会えた。」


彼の瞳は一瞬、グラリと揺れて、そしてまたわたしをとらえた。

「貴様っ……!」

「貴様じゃない、緋奈だよ」

「……クッ………」

赤犬はわたしから距離をとった。
そんな姿が彼らしくなくて、わたしは彼の背中にそっと触れた。


「だけどさ、正直言うとちょっと残念かも。もしわたしがパパの娘じゃなかったら、こんな風に出会わなかったんだもんね」

「何が言いたいんじゃァ!」

「だから――」

彼はピクリとも動かず、わたしの言葉を待った。
だからわたしは小さく笑って、そっと呟こうとした―――



「んっ、ふぁ………んん…」

しかし言葉を発する寸前で、彼がわたしの唇を塞いだ。
優しくて甘いキスなんかじゃなくて、それはもう強引で乱暴で感情的なキス。

目を閉じると、自然と涙が溢れた。
言葉にしてはいけない。
だってわたしたちは決して交わってはいけない立場なのだから。


「ん……緋奈……ハッ……」

「……サ、カズキ………」


名前を呼ぶ度に、涙が溢れ出した。

愛しい、ただ貴方が愛しいの

パパもエースも、大切な仲間も沢山この戦争で命をおとした。
失ったものは多くても、得たものなんてない。

だけどわたし、全て貴方と出会うための試練だったんだと思えば、全然苦じゃないよ


「…そんな顔、しないでよっ」

唇が離れると、赤犬はひどく苦しそうにわたしを見つめた。


「エースを殺したときみたいに、残虐な顔をしてくれたら、わたしは貴方を憎むことだってできるのに…」


―――それじゃ憎めないよ


「俺が憎いとさっき言ったのは誰じゃァ」

「……そんなの、嘘だってわかってる癖に」


意地悪だよね、貴方って

下唇を噛むと、彼はそっとわたしの頬に触れた。
時間が止まったんじゃないかと思うくらいその時間が惜しくて、胸が締め付けられた。

どうしてわたしたちは愛を言葉にできないの
ただこの人を愛し、愛されているだけなのに



絶対的正義
(たった一度の口づけで、わたしは彼の正義を汚してしまった)





2012.03.04.09:00


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