89 |
本部に戻れば俺のゴーレムに任務の連絡が入り、一緒にいた新藤がゲートまで見送ると言って付いて来た。それを許したのがまずかったと心底後悔している。 ゲートの前の幾人の中に遠目でも分かるほどげっそりとした奴が一人。俺の隣を見た瞬間の豹変ぶりはさながらAKUMAの転換のようだった。 「月精−!やっと会えました今までどれだけ任務を連投していたんですか心配していたんですよ僕もう心配で心配で夜も眠れ、」 『わ、わかったから。とりあえず落ち着け』 「僕は落ち着いています。それより怪我はしませんでしたか?体調は?何か困ったこととか、」 『いや、全然…』 「本当に!?」 「ウォーカー、君が困らせてどうするんです」 新藤のことは「連投任務」という方舟のある教団にしては無茶な嘘で今回は誤魔化していたが、この馬鹿は真に受けてくれたらしい。 色濃い隈をしっかり拵えた白髪の勢いに気圧される彼女を俺の方に引き寄せたいのを何とか堪える。最低限、彼女の手を握る奴のそれを斬り落としたい。 彼女の希望で俺達が付き合っていることは公にはしないことになった。(だからこの場で手を斬り落とすと彼女の希望に反するのだ。)俺としては虫除け対策として宣言したいのだが、俺達はエクソシストだ。環境が色恋沙汰をあまり良しとしない。他にも何か理由がありそうな雰囲気だったが、追求はしなかった。 まぁ俺から手を打たなくても元々彼女は警戒心が強いし、誰にでも愛想よくはしない。別に何か問題になることは無いだろうと自分に言い聞かせ、承諾したのだが。 「僕のこの任務が終わったら一緒に食事に行きませんか?勿論二人きりで!」 『無理じゃないのか…?』 「無理ですね」 いっそこの場で宣言してやりたい。 |
<< >> The Diva of submission |