「高尾君、どうしたの」
「……」


彼女は知らない。まさか自分が苦手とする相手に好意をもたれているなんて。
俺は周りの変化や好意には敏感な方だ。そう考えたら三好さんが雫ちゃんに好意をもってるなんてまるわかりだ。三好さんが雫ちゃんを話す時の声…あれだけ優しい声を意図的に出したならもう紅天女になれる。


「んーん、なんでもないよー」
「そっか…ねぇ高尾君、引かないでね」
「へ?」


三好さんの事でぐるぐる回っていた脳内に引かれるという単語がすんなり入る。まさか俺引かれた?引かれたの!?


「あの雫ちゃ」
「私やっぱり高尾君の笑顔に勝る笑顔なんかないと思う」
「…ん?」

「高尾君が笑うとやっぱり周りも温かくなっていって皆笑ってるの、ずっと高尾君見てたらね、高尾君が笑顔を作ってるみたいで、なんか魔法使いみたいに。だから高尾君の笑顔って、何にも変えられない大切なものだなあ、と再び実感したので話させていただきました…」

「門田さんー先生に呼ばれてる」
「あ、ありがとう。じゃあ高尾君、悩んでたみたいだけど、その、わ、笑っててね?」


がらがらと引くタイプの教室のドアが鳴る。そしたら少し遠くで観戦してた鶴ちゃんと真ちゃんと島田が笑いを堪えながらこっちにきた。


「おっまえは…ふっ…ぶふうっ…」
「よかったな高尾…くっ、くうっ…」
「ぎゃははははははやっべー門田さんめちゃくちゃ口説きうまいじゃん!!ていうか高尾お前顔びびるぐらい真っ赤だけど大丈夫か?もう耳まで真っ赤だけど大丈夫か?ひひふう」
「…くっそ…」


なんで俺の周りは天然な兵器と茶化ししかいないんだよ…

次雫ちゃんがあんな事いってきたら俺は襲う。



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