高尾君が発した言葉は、声は、泣きたくなるぐらい優しかった。 いままで逃げない逃げる逃げない逃げる。自分の思いを曲げてばっかりで、どうしようもなかった。 そんなものだよ人生。私何考えてるんだろう。うまくいくわけないよ人生。 だから、もし逃げてるならそれは美亜ちゃんじゃなくて私だ。 「高尾君」 「なに?」 下唇が少し赤い。ああもしかしたら高尾君を悩ませたのかもしれない。でもそれならちょっと嬉しいな、少しでも高尾君が私の事で悩んでくれたんだ。嬉しいな、ごめんな高尾君、私真っ直ぐじゃなくって。 あと鶴ちゃん。報告してなくてごめんなさい。 「実はねー」 「…なにその顔」 「え?」 「ちょ、雫ちゃんなにその顔!!」 「ええええなになに」 「あ!!あー!!今ちょっと笑ってたのに!!」 「え」 笑ってた?そんな馬鹿な…鏡とにらめっこしても変わらない無愛想がそこにいた。 「嘘だあ…」 「嘘じゃねーよ!!あーちゃんと見とけばよかった!!あー!!」 「……」 「そういえば何かいいかけてたけど」 「んーん何でもないよ」 なんていうか、その、逃げじゃなくって今は純粋に言えない。 ああ鶴ちゃん。報告はいらなかったみたいだよ… 「俺雫ちゃんの大爆笑まで付き合うからね!!」 「…うん。ありがとう」 私の人生捨てたもんじゃないらしい。それもこれも全ては高尾君のお陰だ。 ああ、好きだなぁ。 ←|→ ⇒top |