半泣きになりながら席を移動する高尾君を無表情で見送り、入れ違いにガタンと隣に机がくる。 一体誰だと横をみると、秀徳では珍しい不良みたいな人と目があった。 「あ、門田さんだ」 「……えーっと、」 私はいまだに顔と名前が一致していない。だって皆話かけてくれなかったしわかんないんだもの。 視線を彼方此方に泳がせているとなにが可笑しいのかクツクツと笑われた。 「島田、島田裕人。バスケ部で高尾と仲良くやらせてもらってんだよね」 「あ、そうなんだ、」 「高尾から色々聞いてるよー色々」 色々…少し心配になる返答に生唾を飲みながら島田君を見つめる。くすんだ金髪とアースカラーの五種類のヘアピンの色が実に印象的だ。 「別に変なことあいつ喋ってないって、高尾はいい奴だからな」 「あ、はい、知ってます」 「ははっ!知ってるか!……だろうよ」 「…大丈夫ですか!?」 いきなり目が死んだ島田君に思わず声を上げた。さっきまで明るく話していたのにかわりようにびびる。 「あ、あの…」 「大丈夫大丈夫気にしないで。あんまり話すとさ、俺視線で殺される」 「…視線で?」 「うん、鷹みたいに鋭くって俺死にそう!!」 「死に…」 物騒だ。物騒で明るいけどいつも命を狙われてる変な人だ。 高尾君に負けず劣らずの屈託の無い笑顔に和みよろしくお願いします!とまた少しだけ声を上げた。 高尾君、私自立できそう!! ←|→ ⇒top |