雫ちゃんが静かに泣いた時から真ちゃんにピアノをひいてもらう事はなくなった。どうしてもあの日を思い出してしまう音楽室に入る事すらなくなった。


「……あのさ、高尾君、美亜ちゃん知ってるよね」
「うん、マネージャーだし」
「……付き合ってる?」
「は?」
「美亜ちゃんと付き合ってるの?」


美亜ちゃん、つまりは三好の事、三好と俺が付き合ってる?まさか、どこでそんな話題になったのか。


「まさか、俺は恋愛的に三好の事好きじゃねーもん」
「あ、そうなんだ」


俺が好きなのは雫ちゃんだし、ていうかなんでそんな事聞くの、勘違いするだろ、自惚れるだろ、まるで俺の事を好きみたいじゃないか。


「そっか」


安心したように息を吐く雫ちゃんをみて浮かんだ感情はどうしようもない苛立ちだった。
狡い、あまりにも狡い。俺は好きで好きでたまらないのになんで雫ちゃんは煽るんだろう。憧れじゃないって今すぐいってやりたい、俺が好きだろって今すぐいいたい。

俺の事好きじゃないのに


「なんで聞いたの?」
「…え?」

「雫ちゃんなんで聞くの」


雫ちゃんはいつも聞いてばかりで本当の事を話さない。それは狡いよ雫ちゃん。


「ねぇなんで?答えてよ」



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