「雫ちゃん、俺真ちゃんと二人三脚なの!!」
「そうなんだ」


………


「男子は騎馬戦絶対参加とかしんどいわー女子は綱引きだっけ?」
「うん」


……あれ?


「百メートルとか短いよな!!」
「そうだね」


あれ?


「雫ちゃん」
「はい」


あれ??


「雫ちゃんおかしくない?」
「おかしくない、といいたいんだけどまあ若干はおかしい」


なにがおかしいのか、なにが違うのか、相槌の不自然。言葉の不自然、ああわかったこの反応は、


「悩んでる時だ」
「雫と出会って半年たってないお前が何をいう」
「俺は親の次に雫ちゃんをみてると自負してる」
「自負すんなよ」


呆れたようにため息を吐いた鶴ちゃんがひらひらと手をふる。つまりは「いってこい、へましたら殴る」だ。
へらりと笑って雫ちゃんの方に足をむけたら後ろでまた鶴ちゃんがため息を吐いた。


「雫ちゃんっ」
「…高尾君、どうしたの?」


優しくきょとんと見つめる雫ちゃんににこりと笑う。
雫ちゃんの事ならどんな些細な事でも知りたい。俺にだけわかりやすい雫ちゃんの耳元に顔を近づけた。


「…何悩んでるの?」


そういって正面にもう一度たち真っ直ぐ雫ちゃんをみる。一瞬目を見開いた雫ちゃんは、すぐにすっと柔らかくて困ったような表情にかわる。


「高尾君はなんでもお見通しだね」


長い昼休みを有効に使うため、誰もこないありがたい旧校舎へ俺達は足を向けた。



|
top