雫ちゃんが頷いたのをみて、少なくとも嫌われていないのだと思った。
よくわからないけどこれが優越感という奴なのかもしれない。雫ちゃんを一番みてるのは俺で知ってるのもきっと俺だから。

少しでも雫ちゃんの理想の高尾和成でいたい。別に自分を隠すわけじゃない、少し背伸びをして、少しでもかっこよくて優しい高尾君でいたい。

鼻歌混じりに次の授業の用意をする、ああ放課後が楽しみだ。


「あーわかるわ、最近なんか違うよなー」
「まじでイメチェンかなんかかね?」


不意に馬鹿でかい声が教室に響く、周りに迷惑すぎるのでさりげなく近寄ってボリュームを下げる。お前ら周りをみろって。


「なにお前らなんの話?」
「お、高尾じゃーん」
「高尾門田の隣の席じゃん」
「…雫ちゃん?」


まさか、今まで雫ちゃんの話題が出るなんてなかったし今の馬鹿笑いが彼女なら少し腹立たしい。
いつも通りの笑顔で内容を引き出す。


「で、なんの話よ」
「最近門田かわったよなって話だよ」
「え?」
「表情が柔らかくなったっていうかな」
「昔とか完全レイプ顔だったしな」
「あいつレイプしたらそんな感じかもな」
「……おい、」


まさかこいつらがみてるなんて思ってなかった、しかもこんな下衆な会話で、雫ちゃんをみたら少し複雑で悲しそうな顔をしていて、どうしようもない苛立ちが込み上げてくる。


「俺今のあいつなら付き合えるわー中学の時とか怖かったし」
「あいつ気持ち悪かったもんなー」
「おい」
「なんで笑わねぇの?ってなぁ」
「おい!」
「人形みてぇ」


笑いたくないわけじゃないないんだよ、結局表面しかお前はみてないじゃないか、なにが知ってるんだよ、彼女の努力のなにを知ってるんだよ!!

ひっ、く、あの時は声なんて出ていなかった、我慢できていた、頑張ってる時にもっと頑張れといわれるより息苦しくて辛いバッシングをうけてもバレない様に机と腕に顔を埋める彼女の姿を安易に想像できた。
俺は雫ちゃんに何ができるのかなぁ、


「きゃあああああああ!!」


ごめんね雫ちゃん、これは俺がやりたかっただけなの、だからそんな顔はやめてよ、泣かないでよ、

笑顔がみたいのにな、



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