いえない、いえないって、あそこの外れ、夜は色んな奴等がにゃんにゃんする所なんです、とか雫にいえない。
つーかいくら外れだからってヤるなよ、室内でやれよ、もし雫ちゃんがみたらどう責任とってくれんのまじで。

花火がドンドンと地面を震わせてキラキラと散っていく、生まれてから何回もみたけど何度みても綺麗だ。
ちらりと横をみれば白地が赤や青の光に染まっていて、薄焦げ茶の髪が風ではらはらと揺れていた。

わからなかった。好きといっても彼女に伝わらないし愛してるは彼女を困らせる、一度もない経験をすぐにできるほど俺は器用ではない、皆俺をなんでもできるみたいにいうけどそんな事はない。一人の女の子を正しく愛せない不器用な奴だ。


「私、高尾君の笑顔好き」


ぼそりと彼女が呟いた、その一言で心臓がばくばくとはやくなるし、気のきいた台詞も返せない、結局は「着物すげぇ似合ってる」と返してしまった。返答になってねーし、

はやく彼女が俺の全てを好きになればいいのに、笑顔への憧れが恋に変わればいいのに、俺の事を一度でいいから好きといってくれればいいのに、ああそうでもきっと俺は失敗をする。

数センチ越しの体温を感じたくて雫ちゃんの袂を少しだけ掴んだ、花火だけが映る瞳に少し嫉妬する俺はまだ正しい恋愛の仕方を知らないから、しばらくは雫ちゃんが憧れる人でいさせてくれ。いつか俺のおかげで彼女が笑ったらその時は本当に好きだと伝えるから。

今はまだ、この距離が心地い。



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