綿飴を少しずつ食べながら出店を見て回る。結局お金を高尾君は受け取ってくれず、さらにたこ焼きを口に二、三個突っ込まれた。
お詫びにと綿飴を差し出せば食べてくれたけど、高尾君のお金なんだからお詫びも何もないと絶望した。
空は綺麗に藍色になっていた。周りがざわざわと来たときより騒がしくなっている。
迷子にならないようにと高尾君に言われ甚平の裾を掴んでいるおかげでこの人混みでも迷子には一度もならなかった。


「あー花火始まる、見に行こ」
「うん」


握る力を少し強めて歩みを進める。からんからんと鳴る下駄にも大分慣れたし、何より一定の時間が立てば高尾君は座って食べるといって私の足を休ませてくれた。


「外れにいくの?」


外れからでも花火は綺麗にみえる、むしろ外れの方が見易いから皆外れにいくものから思えばそうでもない。なら人混みもないし絶対のスポットだ。外れまでは少し歩かないといけないけど十分に私の足は持つ。


「外れは駄目」
「高尾君、足大丈夫だよ」
「いやそうじゃなくてー…あー……」
「私いつもお使いの時あそこ通るよ」
「はっ!?夜に!?」
「?うん」


あそこは外れだけど人はそれなりにいる。恋人がよく通るから安全だし、近道にもなる。


「駄目!もう通っちゃ駄目だから!」
「なんで?不審者いないし、人も多いよ?」
「あー!!とにかく駄目!!」
「…高尾君がいうならやめる」


もしかしたら私が出くわしてないで不審者だっているかも知れない。高尾君の言うことにしたがってたらまあマイナスな事はないだろう。
少しだけ丘になってる所をあがれば出店が一望できた。


「とにかく、こっからなら見えるし人も少ないから」
「そっか」


高尾君の隣に座ればちょうど花火があがった所だった、パンッと藍色の空に色とりどりの花が咲く。

花火があがる中、私は高尾君をちらりとみた。もう気持ちはすとんと私に落ちていた。

高尾君の笑顔が好きだ、一生たっても高尾君の笑顔を嫌いに、好きでなくなるなんて絶対無い。高尾君の笑顔が私は好きだ。

高尾君の笑顔が私は好きだ。

あと、高尾君のバスケをしている所が私は好きだ。
少し子供っぽいのにすごくしっかりしてる大人な所も好きだ。
誰でも優しい所もかくばった大きめの手も声も。

高尾君との関係は壊したくない、まだ私は笑ってない。いつかきっと笑えるようになる、美亜ちゃんの恋は叶って欲しいけど私だって高尾君の近くにいたい、


「私、高尾君の笑顔好き」


だから、私の気持ちは憧れ以外はしまう事にしよう。



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