「雫ちゃん、足下気をつけてね」
「う、うん」


おかしい、どうみてもおかしい、なんで私が高尾君と一緒に出店を回ってるんだろうか、意味がわからない。
というか私は美亜ちゃんを応援しなければならないのに何をしてるんだろう。普通ならこの場所は美亜ちゃんだ。


「……雫ちゃーん」
「え、あ、なに?」
「俺と回るのはいや?」
「へ?」
「なんか楽しくなさそうだからーって、あ、いや気にしないで!!」


そういえば、高尾君だけだった。無表情でも私の喜怒哀楽を読み取るのは。
別に感情豊かではあると思う、顔にでなくても楽しいし悲しいし怒る事もある、でも顔にでないから人に感情を読み取って貰おうなんて思った事なかった。
私はまだ笑えない、ぎこちない笑顔は笑顔とはいえない、なら無理矢理笑顔作るよりは無表情がましだ。

視線をあげたら少し困ったように笑い頬を指でかく高尾君がいた、今でもずっと、高尾君の笑顔が好きで好きで堪らなかった。


「本当に楽しい」
「あ、そっか、」
「あと高尾君、甚平似合ってる」
「へっ!?」


素っ頓狂な声を出した高尾君が照れて笑う。いこっか、と照れ臭そうにいった高尾君の一歩後ろを私は歩いた。
がやがやと騒がしい中、空は藍色にどんどん近づく、そういえば花火を少しやるらしい。


「雫ちゃん、何か食べる?」


いきなり立ち止まった高尾君にぎりぎりぶつからない所で足を止める。お母さんが今日のためにお小遣いはくれた。


「……」


綿飴や林檎飴(蜜柑飴や苺飴なんかある)唐揚げに焼きそば、たこ焼き、クレープにかき氷、射的に的当て輪投げにくじ引き。


「…綿飴?」
「なんで疑問系!」


ブハッと笑う高尾君が買ってくると走り出した。綿飴が売っている所は少し遠くて下駄の私は走れない、出来るだけはやく歩いて出店につけば大きめの綿飴を持った高尾君がいた。


「可愛い女の子が食うっていったら大きく作って貰えたー」
「おー可愛い可愛い、お前も隅に置けねぇなぁ坊主」
「おっちゃん俺十五」
「俺にとっちゃあ餓鬼」


私が出店につくまでに何があったのかおじさんとフレンドリーになりすぎてる高尾に少しびっくりする。この人どんだけコミュニケーション力高いんだ。
綿飴を受け取りある事に気づく。


「あ、お金…」
「いいって嬢ちゃん、こういう時男は奢りたいもんだから、むしろ渡す方が失礼だって」
「うわー俺のいいたい事なんでおっちゃんがいうの、ま、その通りだから」
「……ありがとう」


綿飴を一口かじれば少し甘過ぎる様な気がした。



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