キュッ、キュッ、ダンッ、ダンッ、
赤茶色のボールが手から手にへとくるくる回る。「真ちゃん!」三百六十度みえてるんじゃないかってぐらいの位置から高尾君がパスをして、動きを止めた緑間君が投げたボールが高々放射線を描いた。


「てめえ緑間!!練習中はハーフまでっつったろ!!」
「……ふん」
「宮地さん真ちゃんは「ごめんなさい」ってます」
「わかんねーよ!!」


網だけを揺らし、スパッとゴールに入っていった。
ぞくぞく、と鳥肌が立つ。


「よし!十分休憩!!水分補給を忘れるなよ!!」


部長さんの大きな声で部員は「水!」と叫びながらバラバラに別れる。遠目からでも高尾君と緑間君がくるのがわかる。


「雫ちゃん!どう!?」


ニコニコと座ってる私に膝立ちで目線をあわせる高尾君にポカリを頬にあてた。


「か、かっこよかった、すっごいかっこよかった!」
「!!」


かっこよかった。あんなにかっこいい高尾君や緑間君ははじめてみた、ボールを必死でおいかける高尾君がなによりかっこよかった。
汗ではりついた高尾君の髪を耳にかける。酸素が足りなく真っ赤になった高尾君がはああ、と息を吐く。


「やっべえ、超やばい」
「っお疲れ様!」
「いや違くてさー、あーもう真ちゃんヘルプ!!」
「しるか」


緑間君はしんどくないのかいつも通りの白い肌で息をあまり乱れてない。うっすらと滲んでいる汗を拭いていた。
頬に当てていたポカリをひょいっととられる。ありがと、と礼をいってからポカリは高尾君の喉に入っていった。


「っはあー!あー生き返るー!!」
「あとどれぐらいやるの?」
「んー?……たくさん」
「……うん」


そっか、そんなにしんどいのか、そりゃあしんどいよね、秀徳は強豪校だもん。
その中で高尾君も緑間君もレギュラーなんだもんね。凄いんだよね。
みたいな、もっともっと、高尾君がかっこいい所が。


「ねぇ、高尾君」

「すみませーん!!遅れましたあー!!」


彼女はいつも私の近くにいて、いつも笑っていたんだから。
それが怖いと思うんだ。


「あれ?雫ちゃんだあ」



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