「メアド交換しよっ!!」


高尾君がおかしい。私が泣いた時から高尾君がおかしい。私の涙には魔力が込められてんじゃないんだろうか。
私の笑顔のためにメアド交換だなんて高尾君はおかしくてもできている。
でも、凄く、凄く気になる。


「高尾君熱あるの?」
「いやないよー…よっし雫ちゃんのメアドゲット!!」


……たた、高尾君は、もしかして、私の事を、私の事を、


「たっ、高尾君、私達ももももしかして、友達!?」
「んー?うん、今はね」


私は今舞い上がる気持ちだ。ぶっちゃけ泣きそうだ。高尾君が、笑顔の神様が、

私と友達なんてえええええ!!!!


「嬉しい…やっぱ笑えないけど嬉しい…」
「無表情だけど雫ちゃん、ちょっと柔らかい無表情だよ、可愛い」
「はいストップ雫、あたしと緑間とメアド交換しようか、ね?」
「うん!!」


ああああ至福、至福だ。若干柔らかいとすらいわれた。ああ至福…
鶴ちゃんと緑間君のメアドを入れて携帯を閉じる。
お母さん、お父さん、高尾君、鶴ちゃん、緑間君。アドレス帳の文字で泣ける日がくるなんて……

ふと鶴ちゃんのメアドに違和感を覚える。hana87。鶴ちゃんの本名は結城鶴乃。何一つ当てはまらない。


「鶴ちゃん。はなってなに?」
「え?あ、あー…、気にしないで」
「?うん」


思えばメアドの内容につっこむなんてダメなんだろうか。自分の世間知らずに少しだけ落ち込む。
そして私は重大な事に気づいた。

明後日から、夏休みだ。

夏休み。それは昔の私にとっての一ヶ月の自習勉強と読書の時間だ、が、今の私は少し違う。
友達、友達がいるのだ。
もしかしたら夏休みの間に遊べるかもしれない、さらに笑えるかもしれない…私に淡い期待が芽吹く。


「あー夏休みバスケ浸けだわー」


淡い期待は崩れ落ちた。そうだ、そうだよ、高尾君も緑間君もこのバスケ強豪校のレギュラー(しかも一年生)なんだよ。
いや、でも鶴ちゃんなら…


「つ、鶴ちゃん…」
「ん?」
「…夏休み、ああ遊びに誘っていい?」


鶴ちゃんに爆笑された。それは聞かなくていい事らしい。「友達なら当たり前、暇じゃない時あるけど誘って」らしい。
ほっとしていたら肩をガシッと掴まれる。何事かと顔をあげたら。


「俺も誘ってくださいおねしゃすっ!!」


そう高尾君が叫んだ。
びっくりしたけど死ぬほど嬉しかったのでこくこくと頷けば「ぃよっしゃあ!!」と叫んだ。
バスケ部は甘くないらしい。が、遊びは大切だと実感した。



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