「ほい、タオル」
「…ありがとう…」


声を出さずただただ泣くだけでも目が真っ赤になった私をみて高尾君は私を背中で隠しながら保健室に連れていってくれた。温かいタオルを目にゆっくりあてる。

結局、高尾君は一言だけいって、泣く私の頭を優しく撫でる事しかしなかった。私には高尾君の手温かさが心地よくて、さらに泣けたけど。


「雫ちゃん沢山泣いたじゃん」
「え、あ、はい」


やはり怒っているのだろうか、高尾君には四時間目の国語をサボらしてしまったのだから。
なかなか返答が無く、どんな様子かタオルを外そうとすると何かでおさえられた。すぐに圧力は無くなり恐る恐るタオルを外す。


「そんだけ泣いたんだ、ちょっとぐらい休んだっていいんだよ」


高尾君がニカッと笑った。
私は、高尾君の笑顔が好きだ、今もかわらず高尾君の笑顔が大好きだ。

高尾君みたいに、笑いたいと思う。


「高尾君」
「なに?俺的には笑って欲しいんだけど」

「…私、笑いたい、です」


途切れ途切れにいった言葉に、高尾君はまた笑った。

笑って。そういった高尾君の言葉が妙にむずかゆい。



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