「雫ご飯食べよ」


嬉しい。今なら笑える気がする。あ、無理だった。
鶴ちゃんには私の表情事情を話したら手伝うといってくれた。私はもう笑わなくてもいいような気がしたが将来的にも色んな意味でアウトだから自分の気の迷いに殴りたくなった。高尾君がいなかったら即ゲームオーバーの癖に。


「お弁当おっきいね……つ、鶴ちゃん」
「そんな緊張しないでよー」


鶴ちゃんと机を合わせ食べる。これだよこれ、これこそ私が望んだ形なんだよ!!

幸せ一杯に購買のおばちゃんがあたためてくれたカレーパンを頬張る。今日は寝坊したためカレーパンとフルーツ牛乳というお昼ご飯だ。おばちゃんのカレーパンおいしい。


「門田ちゃん俺も混ぜてー」
「あたしに断りをいれろ」
「真ちゃんこっちー!!」
「かっずー無視すんな轢くぞ」
「うわ先輩思い出すわー」


……絵になる、超絵になる。もう付き合えばいいんじゃないかな…あ、いい。鶴ちゃんと高尾君付き合えばいい。


「門田、本明日でいいか?」
「あ、うん、どこまで読んだ?」
「早織が死んだ所か」
「…早織死んじゃったか…」
「…なんか門田ちゃんと真ちゃんが読む本よく人死ぬね…俺門田ちゃんに本貸して貰ったけどもう二人死んだよ」
「“見境の真実”も死ねからね…ていうか早織って“最後春に君をみた”じゃん!!まじか!!」


なんと、鶴ちゃんは最後のシリーズまで知っていた。緑間君も鶴ちゃんもマイナーも王道もよく知ってて嬉しい。
鶴ちゃんは文学少女って感じじゃないのになあ、そう思えば緑間君だって運動できるって感じじゃないけど。


「俺も本読まねーとなー」


はっと、高尾君の存在をしっかり思い出す。そうだ、高尾君はあんまり本を知らないんだ。何か、何か皆で話せる話題を、話題を、


「…高尾君お弁当は…」
「あ、もう食った、早弁したし」
「おおふっ」
「かっずー早弁止めなよ、女子にモテないぞ」
「別にいいっての」

「え、高尾君モテないの?嘘だ、こんなかっこいいし性格もいいのにモテないわけないよ。ね、緑間君」
「俺にふるな」


高尾君がモテないわけないじゃないか。そういえば高尾君は視線を揺らして「あー、うん、ありがと」と言った。
……やはり、私は空気が読めない女である。



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