「はい、チーズ」
「いえい」
「はい、ひきつってまーす」


親指と人差し指で長方形をつくる高尾君に私は笑ってピースをする。残念な事にピースはできていてもひきつっていたらしい。口角を上げる度に筋肉痛を起こしていたはじめを思い出せば充分な進歩である!!……と、思いたい。


「…笑えないなあ」


あの時、美亜ちゃんに言われても笑っていればよかったのだろうか。
皆からバッシングを受けても笑い続けるべきだったんだろうか。
むしろ、私にまた笑う価値があるのだろうか?
むしろ笑わなくてもいいような気がする。愛想を捨ててもいいような気がする。


「門田ちゃん」


俯いていたら高尾君に声をかけられる。何事かと顔を上げれば相変わらず向日葵みたいに明るく笑っている高尾君がいた。


「炭酸ありがとな!!」


でも、高尾君の笑顔をみたら笑いたくなる。笑いたくなる限りは、私は笑うために努力をしたくなるのだ。
“笑う門には福来たる”を目指して。


「高尾君、私顔コロコロするやつ買ってみるよ」
「いや門田ちゃんそれ笑顔になるためじゃないから。小顔のためにコロコロするやつだから」



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