「ふられたら俺どうしよう」


鼻声混じりの呟きが聞こえた。


「どうもしないだろう」
「真ちゃんったら親友がふられるか付き合えるかの時に淡白的だね!!」


淡白的も何も、別にどうもしない。実ったらおめでとう、実らないなら残念だった。の二択。
高尾に選ぶ権利はないし、全ては門田の意思により決まる。


「全くもって、お前は変わらないな」
「ひっでえ!!俺だって進化してる!!多分!!」
「そうか」
「塩対応!!!!」


思えば、門田雫という少女により、俺は苦労した。正確に言えば、門田が好きすぎて辛い高尾の言動にだが。
放課後になってから約十分、ぐちぐち項垂れるこいつに俺はなんて声をかければいいのだろうか。

頭の中、色々な言葉を回しながらぐずる高尾を見物する。
面倒臭い男だ、付き合えても付き合わなくても対して変わりなんかないだろう。


「ただの言葉の繋がりなのだよ」
「…あのさー、真ちゃん」


ずず、と鼻の啜る音がして、項垂れて高尾が顔を見せた。鼻の頭が少しだけ赤くなっている。


「世の中は馬鹿みたいでね、その言葉の繋がりで幸せになれちゃうの」
「…」
「親友も恋人も夫婦は所詮言葉の繋がり、でもその言葉があるから信用できて期待して幸せになるんだよ、俺とか特に馬鹿だから他人の繋がりは言葉でしか表せない」


あー、顔大丈夫かなあ。とタオルを顔面に押し付ける高尾をぼんやり眺めた。

他人、との関わりを持つための言葉は腐るほどある、生まれてはじめて高尾和成という男から、文学的な事を聞いた様な気がした、しかもうまくできた話だ。


「なるほど、言葉を当てはめられるのなら安心だな」
「なにが」
「お前と門田の関係なんぞ、恋仲以外当てはまらない」


そういうと、タオルから目をだけを出して「まじで?」と呟く様に問い返した。残念な事に、しっくりときた二人の関係は間違いなく恋だの愛だのが間に挟まっていた。

まぁ、こんな事はどうでもいいから、早くいってやれ。



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