「…」
「…顔酷いわよ美亜」


どこからどうみても不機嫌そうな美亜が机にうっぷつす。正直雫よりかっずーより問題はこっちにある。

そんな不機嫌な顔でも相変わらず可愛らしい顔立ちだ。羨ましい。あたしもこんなに可愛ければよかったのに


「嫌味ね、鶴乃」
「は?何が?」
「口にでてるわよ、アンタほど美人ならあたしに嫉妬する要素ないわよ」
「あー…いや、美亜は可愛いよ」
「きもい」
「酷いなあ」


変わっていく。日常が、少しずつ、でも劇的に、そして今日、大きな変化が起きるんだ。
変わっていく、知らない所で確実に、今の雫に全て話せないほどに、変わっていく。


「…鶴乃、どうしたのよ、話なさいよ」
「美亜にも人を労る心があったのね」
「シメるわよ」
「物騒だわー……フられただけ」
「……あんたが、誰に」
「幼馴染」
「……あっそ」


明日には、かっずーが嬉しそうに笑いながら雫に挨拶して、雫も照れながらそれを返して、緑間が苦笑しながら不器用に祝って、そんな緑間もある子に思われていて、島田も優しいし、美亜だってほんとは嬉しかったりして、勿論あたしも嬉しくて。


「変なタイミングに告白したのね」
「いやあ、なんか、色々ありまして」
「ふん、どうせアンタもすぐに雫みたいに幸せになるわよ」
「…」


びっくりした。まさか三好美亜がこんな事を言うとは。


「…美亜も幸せになれるわよ」
「あたしはとっくの昔に幸せよ、雫が近くにいるんだからね」
「あたし達は?」
「アンタ達なんかおまけよおまけ、マシュマロ買ったらチョコが中に入ってたもんよ」
「いらない物じゃないんだね」
「…ふん」


変わっていく、皆が、大人になっていく。きっと明日も世界は平和で幸せだ。


「あたしさ、まだまだ頑張るわ」
「そ、」
「かっずーが馬鹿すぎて何でもできるような気がしてきた」
「その馬鹿が雫を幸せにするんだから腹立たしいわ」
「美亜は偉いねえ」
「子供扱いとか気持ち悪い」


苦虫を噛み潰したような顔をした美亜に思わず苦笑する。放課後へと続くチャイムが鳴った。

あ、教室に戻るの忘れてた。



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