『…それでは、長い間お邪魔しました』
『ごめんね、高尾君、雫よく寝てて…』
『あ、いえ、少し熱っぽそうだったので、ゆっくり休ませてあげてください』


「…高尾君って、もしかして雫の事好いてくれてるのかしら」


そんな事を思いながらティーバッグをあげる。まぁ、好意関係無しに、彼には感謝している。雫があんな風になるなんて思っていなかった。今日も私達は両親失格ね。


「雫、お茶が入ったわ」
「…うん、飲む」


ノートとにらめっこして唸る雫の前に紅茶を置く、お父さんと長い間話した後、何かを思い出したようにノートを持ってきて、以来ずっとにらめっこを続けている。


「なに書いてるの?」
「…感想文」
「なら貴方得意じゃない」


幼少期より、雫はいつでも国語科目は素晴らしい成績だった。丁寧な文に先生が絶賛していたのをよく覚えているし、今も文才はあるはずだ。


「わ、わかんないんだよ、今更なんてかけばいいのか!」
「…あぁ、なるほど」


つまりはそれ、高尾君へのラブレターという事か、納得納得、でもノートに書くのはいただけないわね。

頭を抱える雫と、それを苦笑いで眺めるお父さん、久しく、家族一同幸せな家庭を味わっている様な気がした。


「平和ね、ラブレター、平和万歳って書けばいいわ」
「お母さん…!!」
「ラブレター…?」


幸せな家庭、というお花が咲くオーラは撤回しよう。お父さんから黒いオーラがでている。
あらやだこの人、この期に及んで反論する気なのかしら。


「若い内から男女交際なんぞ、認めんぞ!!」
「どこの頑固親父なのよ貴方」


思わず白い目で見てしまう。だから親子関係うまくいかないのよ、お馬鹿さんよこの人。
雫も雫でなんと返すのか、またツンドラ気候に戻ってしまうのか…


「……お父さん、私反抗期だから」


返答は私が予想した物の斜め上にいった。この子成長してるわ、私が甘く見すぎたのね、あぁ、お父さん、私達惨敗よ。


「私今反抗期だから!」


そう顔を真っ赤にし、ノートを持ち二階に走っていった雫に苦笑する。結局飲まれる事はなかった紅茶に、私が口をつけた。


「…どういう意味だ…!!」
「雫はもう大人って意味よ、貴方」



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