二階へ上がった雫ちゃんを見届けてお父さんと向き合う。
国語力が乏しいながら、言葉を思いだし深々と頭をさげた。


「先ほどは、無礼な発言、失礼しました」


許せなかった。今の彼女の在り方にすら非道な台詞を浴びせる事が、努力を嘲笑う事が。
もう雫ちゃんの涙も苦笑も見たくはないのに。


「顔をあげろ」


指示通りに顔をあげ、お父さんをみる。雫ちゃんとはDNAが仕事を放棄したと疑うレベルで似てないお父さんだ。劇的に似てない。


「お前はなんなんだ」


なんなんだと言われても困る。どういう風に言えばいいんだ。クラスメイト?友達?親友?雫ちゃんに惚れてる男?


「……大切な人、って思ってくれたら嬉しいですね」
「返答になってないぞ」
「…ただのクラスメイトです。少しだけ仲の良い」


用意されてきたお茶を一口だけ喉に通す。二階からお母さんが帰ってきた所をみると、雫ちゃんは寝るなりなんなりで体を休めているようだ。

とにもかくにも、問題はこれからだ。とりあえずはお父さんとの仲を最低ラインまでに戻さないと駄目な気がする。できれば嘲笑した事は雫ちゃんに謝ってほしいのだが。


「…雫は、」


口を開けたお父さんに思わず体が強ばる。こい、どんな言葉が来ても、それ言葉を否定するなり肯定するなりはできるはずだ。まずは会話をして、それから…


「学校ではどうだ」


頭を悩ませる俺に浴びせられた台詞は実に拍子抜けした物だった。


「学、校、では………さっき話した通りですが」
「友人の性格やら周りの人間やら勉強やらまだあるだろう」
「いや、普通に……個性のある友人がいますが」
「周りの人間はどうだ」


思わず返答が遅れた。もしかして、この人もそういうタイプか?この感覚はよく知っている、というかデジャヴだ。


「勉強は遅れてはないのか?」


ただの娘が大好きなお父さんじゃねーか!!!!


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