「暑い……あづい」


下敷きで扇ぐのすら疲れてきて手をだらりとぶらさげる。真ちゃんですらボタンを開けるのだから俺もいつもより開けていいはずだ。今聞こえたカメラのシャッター音には気づかない事にする。
それにしても、今日は暑い。室内運動部っていうのもあるのか、本当に溶けてしまいそうだ。

あーあ、誰かつめたーい飲み物でも買ってきてくれないだろうか。シュワシュワする炭酸とか。自分で買いにいけよって話である。


「お、高尾ー炭酸くれ」
「んあー?……あ?」


炭酸?俺が欲しいわ。何事かとタオルを外し机をみたら、真ん中に泡が浮く炭酸があった。思わず目をパチパチさせる。俺は一度も席を立っていない。じゃあ、誰が、

ペットボトルのキャップをみて全てを悟るって隣の席をみる。無表情な門田ちゃんが少しだけ笑っているような気がした。それは幻覚だったけど。


「高尾?高尾ーくれんの?」
「ん?んーん、これだめ、俺の」
「えーなんだよー…あ、彼女からの差し入れとか!?」
「いーや。愛弟子からの差し入れ」


真っ白なはずのキャップには油性ペンでニコちゃんマークが書かれている。俺の愛弟子からの差し入れに間違いない。炭酸を飲んで隣をみると愛弟子が普段より少しだけ柔らかい顔をしてミルクティーを飲んでいた。



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