「何をした高尾おおお…!!」
「おうおう三好さんがお怒りだわ」


そりゃあ、そうだよな、ほんと。

俺の所為は雫ちゃんは脱け殻状態。昨日送りとどけた時から魂が抜けたみたいに頭の中は空白だ。


「何したって聞いてんのよ…!!」
「好きっていった」
「なっ…にを!!」
「好きっていったんだよ」
「アンタねぇ…!!」

「あー…先輩方、先に走りにいきましょう!ほらほら緑間もいくよ!」


スポーツドリンクを握り潰すのかと思うぐらいにメシメシいってる。流石に壊すのはやめていただきたい。
…なんていうか、草津が空気の読める子でよかった、ほんと。


「馬鹿じゃないの!?」
「なんで」
「こんな時にいうとかっ」
「こんな時だからこそだよ」
「はあ!?」


俺は雫ちゃんが大好きだ。


「雫ちゃんは線をひく」
「……」
「友人の線をひく」


雫ちゃんにとって友達はなにより大切な存在だ。雫ちゃんは守る、嫌われたくない不安感に押し潰されそうなぐらいの思いを背負って、黙る。


「でも友人はそこ入れない」


その一線は“友達”には入れない。それよりも深くて自己中心的な感情を押し付けないと雫ちゃんは迷い続ける。
迷うのは一瞬だけでいい、そして俺をまだ優しい人だと勘違いしてくれればいい。それで俺は優しい高尾君になれる。


「……そんなのエゴよ、友人だろうが他人だろうが悩み事は聞けるし解決もできる」
「そうかもね」
「そう思うなら、なんでそうしなかったのよ」


彼女が好きだった。努力する姿を一番みてたのは俺だ、彼女を好きなのも俺だ。
エゴ、なんて今更、俺はいつでも自己満足で動くエゴイストだ。


「俺が限界だったから」


一瞬だけ三好が目を見開く、すぐに俺睨みつけてドリンクを投げた。


「やっぱりあんたなんて大嫌い、はやくくたばれ馬鹿野郎」
「…ありがと三好」



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