とりあえず、話させてもらうと、文化祭は大成功に終わった。
実に素晴らしい成績を残し、学年では勿論売上一位だし、二年生にも勝ったかも知れない。
大成功に終わったのは文化祭だけだが。

…あのー、なんなの?かっずーと雫は今からお通やなの?

なんていうか気が抜ける、というか気が入ってない。かっずーも雫も明後日の方向を向いてるし、朝から会話もしてない。あのかっずーが雫に話しかけてない。
なんていうか、正に…


「嵐の前の静けさ…」
「そうだねその通りだ」
「うおわあっ!?び、びっくりした、!!いきなり話しかけてこないでよ!!」
「ごめん」


英語課題をこなす無表情なかっずーが不気味だ。明日、金曜日提出なのにまだやってなかったのかこいつ。


「なにがあったのよ…」
「明日になったらわかるよ」
「…」


…今まで、今までかっずーと会話が途切れる事なんてなかった。全身というか本能というか感じてしまう、嫌でも理解する。
底が見えないぐらいに、深い意思と考えを持つ、高尾和成が、


「高尾」
「ちょ、その呼び方久しぶり!!」
「大丈夫だよね、」


すがるように高尾のシャーペンを手ごと押さえつける。なにをするかはわからない、でも、決意というか、“なにか”する事だけはあたしでもわかる。

失敗の二文字が頭を掠める。雫は悩んでる、高尾も悩んでる。でもあたしはなにも悩んでなんかいない。


「大丈夫だよ」


その高尾の台詞まで、あたしは心配で心配で、結局誰よりも理解者から離れてるんだと実感した。
ああ、なんて脆くて杜撰な、


「鶴ちゃんは誰よりも皆を事わかってるから」


たったそれだけの台詞で、何も理解していないあたしが初めて理解した。
雫は、彼の台詞に惚れたんだろう。表情でもわからない、そのストレートでわかりやすい台詞に。


「…な、泣かせるなよ」
「泣かせるかよ」



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