「大変だああああああ!!!!緑間が抜ける!!フロア足りない!!!!」
「はあああああ!?」


厨房(元第二数学ルーム)に響き渡る絶叫を聞き、野菜に油を通しながら溜め息を吐いた。


「もう腹くくってフロアでろや島田!!」
「北本さん痛い痛い勘弁してよ俺フロアはやだ」
「お願いします島田様執事服着て接客しろください」
「やだよ」
「…島田、はよしいひんとメイド服に変わるで?」
「ちくしょおおおおおお!!!!」


あ、とうとう島田君でるんだ。あんなにあらぶってる島田君ははじめてみた。なんというか新鮮で不思議だ。
昨日の内に冷凍にして大量置いておいたため厨房はまだ余裕があるのだがフロアはかなり大変らしい。これは厨房が接客にまわる事になるだろう。


「あかん…どないしよ…」
「北本さん、厨房から寄越そうか?」
「ああせやな…門田さん接客できる人連れてってくれへん?」
「うん」


厨房に戻ってハンバーグを解凍したりカフェオレをつくるクラスメイトに声をかけていく「無理」「やだ」「ごめん」……うん……


「だめでした…」
「あああ門田さん泣かんといて…しゃあないて、皆メイド服から執事服で接客なんて嫌やもん」
「じゃあなんでメイド執事喫茶なんて考えたんだ…」
「そこは夢求めた結果やね、うちは高尾とか緑間とか島田と西とかでわりとイケメンおるし、結城とか沢やら東山やら別嬪さんがおるし……」


そこまでいって北本さんがぴたりと止まる、まじまじと私をみつめてにやりと笑った、というか北本さん可愛いから北本さんがでればいいのに…


「いける」
「なにが?」
「よぉみてみたらそこそこ可愛いやん?ちょっとグロスとかつけるから動かんといてや?」
「……え、え」


じりじりと北本さんが距離をつめてきては後ろへ下がる、そのうちとんっと壁にぶつかり目の前に北本さんがきた。小柄ながらも威圧感は溢れている。


「き、きたもとさん…」
「東山今から休憩やし、サイズはあうし、可愛くしてやるで、門田さん」
「…ひっ、」


料理を作る仲間達の同情を得ながら絶叫した。哀れみの視線を投げ掛けた島田君がフロアに出かけると同時に私の手の中にメイド服がおさめられた。



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