門田ちゃんは不器用にみえてとても器用だった。
無表情、これさえ除けば誰とも仲良くできるぐらいに。今はわからないし、聞きもしないけど門田ちゃんには門田ちゃんの昔があるんだろう。

だから、門田ちゃんは真ちゃんと仲良くなれると思った。無表情で器用な門田ちゃんは、真ちゃんみたいな偏屈な占い信者にもなんの偏見を持たず接する事ができるからだ。真ちゃんはいいたい事をはっきりいうし、門田ちゃんも実はそれに近いタイプだ。だから相性はわりといいはずだ。

……確かに、俺はそう予想したし、当たってほしいと思ったけどさ。


「緑間君この小説すごい」
「お前もみたのか、確かにその小説は主人公の感情が細かくかかれているが、少しくどくないか?」
「そのねちっこいのか主人公だよ。ビンが感情を作文にしたら本当にこんな感じになるよ、そこがいいんだよ」
「なるほど…そういう捉え方もあるのか……しかし終盤の修羅場はいらないだろう」
「あ、それは思った。ビンめんどくさいよね。だらだらだらだら」
「俺は断然ジャン派だ」
「ジャン……いい奴だったな」
「ああ……」
「…ジャンに敬礼」

「……仲良くなりすぎだろ!!」


おい昨日の今日で親友の域まで達してるじゃねーか!!どういう事だよ!!あとその小説すげー気になるんだけど!!ジャン滅茶苦茶気になるんだけど!!


「感動作だったよー…高尾君、みる?」
「え、あ、うん、みる」


びびったー気がついてないのかと思ったわ…なんかスルー多いし。
渡された文庫本は真新しく汚れも傷もなかった。汚してしまわないか心配になる。両手で本が折れないように丁寧にしまう。


「高尾君」
「ん?なーに?」
「どうもありがとうね」


門田ちゃんの無表情から威圧感も何も感じなくてあれ、もうちょっと頑張れば簡単に笑えるんじゃない?と心のどこかで確かに感じた。
そううまくいくほど人生と世間はうまくできてはいないのだけど。



|→
top